栗原恵が春高バレー女子で注目したチームと選手 プレーが「胸に残った」就実、大友愛の娘は「ずっと狙われていた」 (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

【就実はセッターと3人のエースを中心に「ブレないチーム」】

――就実の西畑美希監督も、さまざまな思いで優勝を見届けたでしょうね。

栗原 毎日、「体調を崩す選手が出るのではないか」「今日誰も熱がでなくてよかった」と祈るような思いで戦っていたそうなので、精神的に苦しかったでしょうね。そんなことが1年間続いたと思うのですが、今年の春高であれだけのバレーを展開できたということは、昨年も棄権しなければ間違いなくいいバレーができたということ。そこに触れる選手はいませんでしたが。

 そして西畑監督は最後の最後に、「春高の決勝戦で、本当にすばらしいバレーを見せてくれた。ありがとう」という言葉を選手たちにかけた。モチベーションが下がったところから立て直し、すばらしいプレーを見せてくれた選手たちに対する感謝が表れていました。西畑監督は、普段はあまり選手を褒めないそうなのですが、それゆえに見ている側の胸にも残るものがありました。

――試合内容についてはいかがですか?

栗原 就実のセッター・河本菜々子選手は、1年生の時から大事なところでピンポイント起用されていて、「しっかり役割を果たす選手だな」と思っていました。3年生で迎えた今大会はフル出場して最後までトスを上げきって、すばらしいバレーを見せてくれましたね。

 対する下北沢成徳は、やはり周囲の注目は「三冠」でしたが、伊藤崇博監督や選手が口を揃えていたのは、昨季まで指揮を執っていた小川良樹元監督(木村沙織、石川真佑らを育てた名監督)が作ってきたチームとは違う下北沢成徳を「みんなで作り直している」ということ。二冠を手にしている余裕などは見せず、「春高で勝とう」という気持ちが表情に出ていました。決勝でも、チャレンジャーとして臨む姿勢を見せてくれました。

――就実がどんなバレーをしていたか、具体的に伺ってもいいでしょうか。

栗原 就実は横断幕にも書かれている「基本に忠実に」を実践しています。トスひとつとっても、質がすばらしい。簡単に上げているように見えるボールも、セッターの河本選手のポジショニングがしっかりしているから簡単に見えるだけ。とても打ちやすそうなセットアップで、それを2年生の3人のエース、福村心優美選手、押川結衣選手、高橋凪選手がしっかり決める。まったく"ブレない"チームだったと思います。

――エースの3人が2年生なので、来年も楽しみですね。

栗原 楽しみですね。本人たちはいいライバル意識を持っています。今は福村選手の評価が特に高いようですが、押川選手や高橋選手も「自分もちゃんと見て」という気持ちを、控えめながらちゃんと出せる。プレーも含めて、いい相乗効果があるのがわかります。

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