日本女子バレーのパリ五輪出場条件とは? トルコ、ブラジル戦で見えた「サーブレシーブとメンタル」の課題 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【日本がパリ五輪出場を決めるための条件は?】

 主将の古賀紗理那は大会を通してほぼフル出場し、チームを鼓舞し続けた。しかし、ブラジル戦の第3セット途中では、プッシュなどでブロックをかわそうとした結果、ラリーとなって相手に決められることも増えた。

 すると眞鍋監督は、第4セットで古賀を下げて石川真佑を投入し、最後までサイドは石川、井上、林で回した。試合後、会見で交代について問われた古賀は「コンディションの問題ではありません」と唇を噛んだが、この悔しさも先につながるだろう。

 パリ五輪の出場権獲得は持ち越しとなったが、林が「この大会のことをネガティブでなくポジティブに捉えています。強豪国ともわたり合えた手応えはありました」と振り返ったように、多くの選手が手応えも感じているようだった。2000年から2016年まで続いた「最終予選」は、その大会で出場権を獲得できなければ"終わり"というプレッシャーがあったが、チャンスはまだ残されている。

「私が監督に就任した時から、OQTで切符を取って、余裕を持って五輪に臨むことは目標にしていました。でも、(OQTで出場権を得られなかった場合は)最後は世界ランキングで決まることもわかっていたので、五輪翌年に行なわれる、他の国が世代交代を図るために若手を使ってくるだろうネーションズリーグでは"勝ち"を優先しました。そのおかげで、今は貯金が少しある状態です」(眞鍋監督)

 五輪の出場枠12カ国のうち、開催国のフランスに加え、OQTで6カ国が出場権を獲得。残りの切符は、来年のVNL予選ラウンドが終了する2024年6月17日時点の世界ランキングにおいて、上位の5カ国が手にする。

 現在の日本は世界ランキング9位で、すでにパリ五輪への出場が決まっている国を除くと上から3番目。ただ、今回のOQTで出場権を獲得できなかった「アジア・オセアニア大陸」と「アフリカ大陸」の最上位国に優先で1枠ずつ割り当てられるため、日本はVNLで中国(同6位)を上回るか、中国を上回れなかった場合は残る「3枠」をイタリアやオランダなどと争うことになる。

 世界ランキングが変動する大会は来年のVNLまでないため、各選手たちは所属チームに戻ってリーグを戦い、進化を目指す。今シーズンは、石川が兄・祐希と同じイタリア1部で、セッターの松井珠紀もブラジルリーグでプレーするなど海外リーグで揉まれる選手も増える。今大会で得られた経験を生かし、それぞれの地で成長した選手たちが、来年のVNLで躍動する姿に期待したい。

プロフィール

  • 中西美雁

    中西美雁 (なかにし・みかり)

    名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はweb Sportiva、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行なっている。『バレーボールスピリット』(そしえて)、『バレーボールダイジェスト』(日本スポーツ企画出版)、『球萌え。』(マガジンハウス)、『全日本女子バレーコンプリートガイド』(JTBパブリッシング)などを企画編集。スポルティーバで西田有志の連載を担当

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