石川祐希を中心に今年の日本男子バレーは「ひと味違う」 元エースの清水邦広は「攻守の精度」を絶賛した (4ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • Photo by FIVB

【ポーランド相手の反省が生かされた銅メダル】

――準決勝の相手は、開催地で地元の声援が大きかったポーランド。アウェーの雰囲気が色濃い中で、セットカウント1-3で破れました。

清水 選手たちもコメントしていましたが、1セット目を先取した後の2セット目が勝敗を分けたと思います(競り合いながらもポーランドに奪い返された)。逆に、あそこをしっかり勝ちきれるようになればさらに高みに行けるんじゃないかと思いました。

 実際にその2セット目は5点リードされるくらいの展開になっても、終盤にかけて追い上げてデュースまで持ち込めた。VNLを通して、2、3点はリードされてもサーブやディフェンスでちょっとずつ追いつける、追い抜ける力があると選手たちは実感できたんじゃないかと思います。相手チームも、大きな点差がついてもプレッシャーを感じるでしょうし、25点を先に取るまでは安心できないんじゃないかと。

――そして銅メダルを獲得したイタリアとの3位決定戦。清水選手は元チームメイトの福澤達哉さんと解説されて、終盤は興奮して関西弁になってしまっていたようですが(笑)。

清水 大一番で真骨頂を見せてくれて、「本当に強くなったな」という思いが溢れました。今のイタリアは選手の平均年齢が日本と近く、今後のライバルになるであろう国のひとつ。繰り返しになりますが、繋ぎの部分や攻守の精度が一戦一戦上がっていって、本気のメンバーのイタリアにああいう勝ち方ができたのは、チームが成長したことの証明だと思います。

――この試合は1セット目を取ったあとに、2セット目も取れたことが、結果的に勝ちにつながったんじゃないかと思います。そこは準決勝のポーランド戦と違いましたね。

清水 その通りだと思います。3、4セットは取られたものの、ちゃんと修正できていましたね。また、ポーランド戦後には石川選手が「自分のサーブのミスで負けの流れを作ってしまった」と言っていましたが、それも払拭できていた。そういった修正能力は、石川選手だけでなく多くの選手が持っている。それも、試合ごとじゃなくセットごと、点数ごとに修正できるというのが日本の強みになってきていますね。

(後編:「言葉が出ないぐらいすごかった」と絶賛する選手は? 現メンバーの能力を徹底分析>>)

【プロフィール】
■清水邦広(しみず・くにひろ)

1986年8月11日生まれ。福井県出身。福井工業大学附属福井高校から東海大学に進学。20歳の時に日本代表に選出され、2008年に最年少の21歳で北京五輪に出場する。卒業後はパナソニックパンサーズに入団し、長らく日本代表のオポジットとしても活躍。2021年の東京五輪でも日本の準々決勝進出に貢献した。

プロフィール

  • 中西美雁

    中西美雁 (なかにし・みかり)

    名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はweb Sportiva、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行なっている。『バレーボールスピリット』(そしえて)、『バレーボールダイジェスト』(日本スポーツ企画出版)、『球萌え。』(マガジンハウス)、『全日本女子バレーコンプリートガイド』(JTBパブリッシング)などを企画編集。スポルティーバで西田有志の連載を担当

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