石川祐希を軸に「誰が出ても強い」無敗の日本男子バレー 30年ぶりのブラジル撃破にも期待が膨らむ (3ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by karaya masaki
  • Photo by FIVB

 長く日本の課題と言われ続けたミドルブロッカー陣も、確かな進歩を見せた。小野寺太志(サントリー)は攻守で安定したプレーを見せ、山内晶大(パナソニック)は攻撃面で得点能力の高さを示した。髙橋健太郎(東レ)は高いブロックとクイックで、世界に伍するプレーを見せた。ミドルブロッカー陣の成長に伴い、山本智大(日本協会)を中心とする守備の堅さも増し、相手に攻撃を1度で決められることはほとんどなかった。

 シーズンが始まったばかりでベストメンバーではなかったチームもある。それでも、日本の充実度は群を抜いていた。石川はそれを踏まえ「勝たなければいけない相手だった」と言いつつも、「控えの選手や、まだまだ活躍できる選手がいる。今回見せられたのは、ほんの一部分。フランス大会、フィリピン大会と続くが、誰が出ても強い日本を見せられると思っている」と確かな手応えを語る。

 6月20日からのネーションズリーグ・フランス大会では、日本が1994年から公式戦では1度も勝てていないブラジルとぶつかる。石川がシーズン前に「相性がよくないイメージを払拭したい」と話していた強敵だ。

 でも、今の日本なら、ひょっとしたら勝てるのではないだろうか。そう思わずにはいられない。

 石川は言う。

「出た選手がそれぞれの役割を理解して、チームを作っていく。スタッフからの指示に対してしっかり全員がもっと動けるようにならないといけない。そこがまだまだ甘いところ。個人がそれぞれの役割を理解して動けることも必要だし、他の選手の役割を理解して動けるようにもなってくると、さらに強くなる。チームのことを理解してプレーできるようになることが、これから必要になってくる」

「まだベストではない」という自身のパフォーマンスも、まだまだ上げられる。チームとしての組織力も、もっと高めていける。今のチームには伸びしろしかない。充実した戦いぶりを見せる日本は、このネーションズリーグでどこまで世界のトップに近づけるだろう。すべての戦いが日本の糧となり、パリ五輪への道へと続いていく。

プロフィール

  • 柄谷雅紀

    柄谷雅紀 (からや・まさき)

    スポーツ記者、ライター。1985年生まれ、大阪府出身。筑波大男子バレーボール部で全日本大学選手権など多くの大会で優勝した。卒業後の2008年から大手新聞社で事件や事故、裁判の取材を経験。転職した2013年からスポーツの取材に携わる。2018年平昌五輪、2021年東京五輪、2022年北京五輪を始め、多くの競技を現地で取材している。@masaki_karaya

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