大坂なおみは「ママでも世界一」になれる? 偉大なセンパイたちが歩んできた「母は強し」の系譜 (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【憧れのセリーナも憧れた偉大な母親テニス選手】

 男子トップ選手のガエル・モンフィス(フランス/37歳)と結婚したスビトリーナが、女児を出産したのは昨年10月。ツアーに復帰したのは半年後の今年4月上旬で、このあたりのタイムラインは大坂のそれとも合致する。

 そのスビトリーナ、復帰直後の数大会は早期敗退が続いたが、7大会目のストラスブール国際で通算17度目のツアー優勝。すると翌週の全仏オープンでは、世界9位のダリア・カサキナ(ロシア)らを破りベスト8へ。さらに7月のウインブルドンでは、世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)に競り勝ち、ベスト4へと躍進した。

 全仏のベスト8、そしてウインブルドンのベスト4は、いずれも彼女のキャリア最高戦績に並ぶ記録である。

 大坂が敬愛するセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)も、出産から復帰し、グランドスラム優勝への渇望を示し続けた偉大な先駆者。

 2017年9月、36歳の誕生日を目前に控え第一子を出産したセリーナは、産後の合併症に苦しみながらも、翌年3月に復帰。3カ月後のウインブルドンで決勝へと駆け上がると、同年8月末開幕の全米オープンでも決勝に勝ち上がった。

 なお、この時の全米で敗れた相手こそが、当時20歳の大坂なおみ。これが大坂にとって、初のグランドスラムタイトルとなった。

 昨年9月に引退したセリーナは、復帰後のグランドスラム優勝こそ成らなかったが、2年間で計4回、決勝の舞台に舞い戻った。

 加えるなら彼女が書き加えたのは、テニス史だけではない。

 セリーナの復帰後、WTAは「産休の最大3年間への延長」、そして従来は大会エントリーにしか使えなかった『スペシャルランキング』にシード権も付与することを記した。これら環境整備も含め、セリーナが後進に切り拓いた道は計り知れない。

 そのセリーナにも影響を与えた「母親テニス選手」の先輩といえば、キム・クライシュテルス(ベルギー)を忘れてはならない。2005年に全米オープンを制したクライシュテルスは、2007年に24歳の若さで最初の引退。翌年に第一子を出産した元世界1位がツアーに戻ってきたのは、2009年8月のことだった。

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