錦織圭も「ちょっと読めない」望月慎太郎 自らの哲学を貫いてつかんだ覚醒のカギ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【錦織圭も「才能ある選手」と認めるものの...】

 彼が打ち明ける「考えたり迷ったり」は、ジュニアからツアー、子どもから大人への移行期特有の悩みでもあるだろう。

 ましてや望月は、ジュニア時代から相手に応じ、戦略やプレースタイルを変えるタイプ。もちろん、攻撃性やネットプレーが軸ではあるものの、パワーで自身を大きく上回る相手に、その信念をどう貫くかが悩みの源泉だった。

 望月は13歳時に『盛田正明テニスファンド』の支援を受け、IMGアカデミーに留学している。同じ経路を歩んだ大先輩の錦織圭は、どこか自身と似た匂いを放つ天才肌の後輩について、今年8月末の時点で次のように語っていた。

「慎太郎は小さい頃からIMGで見ていて、活躍してほしい選手ではあるんですけど......何かもうひとつのピースがちゃんとくっつけば。自信だったり、重要なポイントでどうプレーするかが自分のなかでハマれば、簡単にポンポンと勝てるようになると思うんです」

 けど......と、やや間をおいて、こう続ける。

「才能のある選手なんで、いつかは来ると思います。ただ、それが来月に来るのか、2、3年後になるのか......そこがちょっと読めない選手かなと」

 錦織がそう予見していたころ、望月は北米のハードコートで苦しい戦いを強いられていた。

 今季は4月にクレーのATPチャレンジャー大会を制し、ウインブルドンでは予選を突破して本戦出場。だが、夏のハードコートシーズンに入ると「パワーのある選手にボッコボコに打たれて」太刀打ちできない試合が続いた。

 さらにアメリカとカナダのチャレンジャーでは、2大会連続で初戦敗退を喫する。本人曰く「自信もなくなっていた時期」。だがその頃......錦織の言う「ピース」を得る出会いが、望月に訪れていた。

「カナダのチャレンジャーには僕も出ていたので、その頃に慎太郎とご飯を食べたり、一緒にランドリーに行ったりと、けっこう話す機会があったんですよ」

 日に焼けた顔に柔和な笑みをたたえて語るのは、今回のジャパンオープンで望月の"コーチ"としてファミリーボックスに座った伊藤竜馬だ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る