錦織圭、全米OP3回戦進出。「吹っきれた」ファイナルセットでの勝因 (2ページ目)

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AP/AFLO

 試合後半になると錦織は、生命線であるフットワークが鈍って、ファイナルセットの第1ゲームでいきなりブレークを許してしまう。ここで驚異のファイブセッターである錦織のスイッチが入った。

「やっと吹っきれましたね。そこからたぶんボールも伸びていたと思うし、ミスも減りましたし、風をやっとうまく使えるようになった」と振り返った錦織は、第2ゲームでブレークバックに成功して悪い流れを断ち切り、さらに第4ゲームもブレークして4-1としマクドナルドを突き放した。

 錦織は気力を振り絞り、リターンダッシュ、ネットプレー、ドロップショットなどを駆使して、振りきりのいいプレーで自らを鼓舞しながらテニスの質を上げる一方で、マクドナルドは最後まで大事な場面でギアアップしきれなかった。ウィナーは共に45本、ミスは錦織が57本、マクドナルドが54本だった。

 錦織とマクドナルドは、共に大きなケガからカムバックを果たしている。

 錦織は、マクドナルドと前哨戦のATPワシントンD.C.大会準決勝で対戦し、2時間45分におよぶフルセットの末惜敗している。だが、2018年2月、ツアー下部のチャレンジャーのダラス大会決勝で初対戦した時は、錦織がストレートで勝利している。錦織にとっては、2017年夏の右手首のケガから戦列復帰してから2大会目でのうれしいタイトルだった。

 一方、マクドナルドは、2019年ローランギャロスのダブルス1回戦で、ハムストリングの腱を断裂し、手術を要するけがとなって戦列を離れた。2020年1月に復帰を果たすものの、3月にはランキングを270位台まで落とした。そして、錦織と対戦した今年のATPワシントンD.C.大会で準優勝をすると、トップ100に返り咲いた。 

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