大坂なおみは記者対応でも成長。世界1位の環境にも慣れてきた (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 3年前には、「ハードコートはハードコート」と応じたその問いにも、「すごくいいわ。遅すぎも速すぎもしない。私はマイアミに住んでいるから、汗をかくのも大好きだし。それに前の会場より風が少ないのはありがたいこと」と詳細に答える。

 3年前の予言どおり「偉大な選手」になった今の彼女は、その手の質問にも、もう慣れていた。

「慣れる」ということで言えば、彼女は世界1位であることにも、すでに慣れてきたと言う。

「まだ数カ月しか経ってないのに、こんなこと言うのは奇妙な感じだけれど......」

 そう自嘲気味に笑いながらも、「インディアンウェルズ(BNPパリバ・オープン)で多くのことを経験した。世界1位として初めて出たドバイも含め、その2大会が大きな助けになっている」と柔らかに断言する。

 たしかに、インディアンウェルズでの彼女は、行く先々でサインや写真を求め生まれる人垣に覆われた。その差し伸ばされる手のひとつひとつに応えるように、彼女はコートを囲むフェンスを1周しながら、何十回とペンを走らせ、幾度もスマホに向かって微笑んだ。

 今年1月の全豪オープンを制して世界1位になった時、「これからはロールモデル(お手本)となることも求められるけれど、その準備はできている?」と問われた彼女は、悲しそうに眉毛を下げて、「まだわからないわ。もう少し後に聞いてみて」と答えた。

 それから、2カ月――。彼女は、「今は(ロールモデルであろうと思うことは)自分にもいいことだと感じている。試合中にイライラした時も、小さな子どもが見ていると思ったら、ラケットを投げてはいけないと思えるから」と言う。

 11歳の頃、マイアミ・オープンの会場を訪れ、憧れのセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)の練習を見るも、「サインをねだることはできなかった」シャイな少女は、今では少年・少女たちのロールモデルであろうとすることで、さらなる成長を自身に促していた。

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