【テニス】苦しんだ7年間。土居美咲がツアー初優勝を掴むまで (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 技を磨き、フィジカルも鍛えて実力を備えるにつれ、より明瞭な壁として浮上したのが、「永遠の課題」である。「ここを取れれば勝利に大きく前進する」という好機を逃すと、坂道を転がるように敗北へと陥る悔しい戦いを、彼女は幾度も経験してきた。特にこの1年ほどの足跡は、大舞台でトップ選手を剣が峰(みね)まで追い詰めては、とどめを刺しきれない惜敗の積み重ねである。

 3ヶ月前の全米オープン2回戦では、次期女王と目される18歳のベリンダ・ベンチッチ(スイス)相手に3つのマッチポイントを掴みながらも、自らのミスで逃す。敗戦後、土居はタオルで顔を覆い、ベンチに腰を沈めると、数分の間はそのまま動くことができずにいた。それでも、試合から1時間ほど経った会見では、大きな目を赤く染め、「次に勝てるというのは、確信に変わっている。継続して何回も、何回もチャレンジしたい」と語気を強めた。

 確信を現実に変えるその瞬間は、ついにルクセンブルク・オープン初戦の、アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)戦で訪れる。世界20位の強敵相手に第1セットを先取するも、第2セットを奪われ、さらには相手に先行を許した第3セット……。過去に何度も、悔し涙を飲んだパターンだ。しかしこの日、彼女はブレークされるたびに食らいつき、最後は自ら加速して突き放した。

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