【車いすテニス】国枝慎吾、4年ぶり全仏制覇に「秘策」あり

  • 荒木美晴●文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 もちろん、ベルトという制約から解放された足は広がり、これまでひとつだった重心がずれてしまうため、強い体幹がないとコントロールできない。実際、2年前に一度試したときはバランスを崩したそうたが、それからさらに肉体を鍛え上げた今は、すでに自分のものにしつつある。

「ベルトを外したことで軸が作りやすくなり、今年に関してはフォアがすごく良いですね。今までは車いすごと回して打っていたところがあったけれど、今は車いすの上で身体だけで回れるような感覚。それに、少しタイミングがズレても回転が足りないとか、スピードが遅くなるということが少なくなってきて、抜け球が減りました。車いすの高さやベルトを変更するといった新しい取り組みが、クレーコートでどう反映されるのか。全仏が楽しみですね」

 丸山コーチも、「不安定の中の安定を求めるのは大変な作業です。でも今、慎吾は技術的にもメンタル的にも肉体的にも安定している。ついに、究極のステージまで来たと感じています」と実感を込めて語る。

「身体を使った取り組みだし、新たな可能性を感じる。すごく新鮮な2014年ですよ」(国枝)

 未開の領域を切りひらき続ける国枝慎吾。全仏で結果を残し、さらなる高みへと歩みを進める。

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