クルム伊達、ダブルスのススメ「いつやるの?今でしょ!」

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 クルム伊達公子の日に焼けた精悍(せいかん)な姿は、今年も北米の強い日差しの中にあった。3月にカリフォルニア州インディアンウェルズで行なわれるBNPパリバオープンと、続いてマイアミで開催されるソニーオープンの2大会は、グランドスラムに次ぐ格付けの大会。ただ、本選出場の選手枠が少ないため、ある意味ではグランドスラムよりも過酷な戦場だ。

日に焼けた姿で北米2大会を戦い抜いたクルム伊達公子日に焼けた姿で北米2大会を戦い抜いたクルム伊達公子 2月末の時点で世界ランキング95位だったクルム伊達は、シングルスではいずれの大会でも予選からの出場を余儀なくされた。予選とはいえ、他の大会なら十分に本選レベルの選手がそろう激戦区。BNPパリバオープンでは予選決勝で惜敗したものの、ソニーオープンでは高温多湿の過酷な条件下で連日フルセットの激闘を勝ち抜き、本選出場を果たしている。それだけでも驚愕と称賛に値するが、加えてさらに驚くべきは、彼女がダブルスにも出ていることだ。この2大会のパートナーとなったバーバラ・ストリコバ(チェコ)は、今回の遠征で初めて組む選手である。それにもかかわらず、クルム伊達たちは抜群のコンビネーションを見せ、BNPパリバオープンでは3回戦に進出。そしてソニーオープンでは初戦で、第1シードにして世界最強ペアの謝淑薇(ス=ウェイ・シェイ/台湾)-彭帥(ペン・シュアイ/中国)を破る大金星を手にしたのだ。
 
 それにしても......、である。クルム伊達は今年1月の全豪オープンの時点では、「オフシーズンはケガもあり、十分なトレーニングが積めなかった」と口にし、試合中も「筋力の低下によるパワー不足を感じた」と表情を曇らせていた。

「身体の調子が良くない中で戦うときは、シングルス一本に絞ったほうが調整しやすい。今年は、シングルスにフォーカスしたほうが良いだろうか?」

 シーズン開幕当初は、そんな思いにも襲われたという。それでも彼女は、最終的には両立を決意する。限界への不安と戦い、心が揺れもした中でなお、ダブルスにこだわる理由とは何だったのか?

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