【テニス】ツアー初優勝した奈良くるみが語る「元天才少女の4年間」 (2ページ目)

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki photo by AFLO

 現在、世界ランキング47位につける奈良の快進撃は、昨年の全米オープン予選突破に端を発している。それは彼女にとって、実に3年ぶりとなるグランドスラム出場。さらには、本選でもふたつの白星を得て、3回戦に進出したのだ。

 その時の彼女の言葉に、印象的なものがあった。

「3年と聞くと長く感じるけれど、自分の中では、そんなに長いとは感じていません」

 どうしても、この言葉の真意がつかめなかった。

 18歳から21歳までの3年間......。それも、時計の針が常人の数倍の速さで刻まれる、アスリートの3年である。長くないはずがない。そんな疑問を素直にぶつけた時、彼女は「今だから言えるけれど」と前置きした上で、こう続けた。

「もちろん、最初の結果の出ない時はしんどい(辛い)気持ちにもなりましたし、すべてが前向きに考えられなかった」

 だが、同時に、彼女は断言する。

「負けて悔しい時期もあったけれど、そこから這い上がる力もついたし、追い上げる中で気持ちをコントロールしていくのが楽しかった。そういう意味でも楽しめていました」

 奈良にとってのこの3~4年間は、自分のテニスを見つめ直し、変化を受け入れ、一度バラバラに崩したパズルのピースをつなぎ、新たな絵を描くようなプロセスだった。まずは、バランスも含めて、フィジカルを徹底して鍛えた。技術面では、フォアハンドの打ち方と、コート内でのフットワークを大きく変えた。奈良は小学生のころから国内では敵なしで、ウインブルドンJr.ダブルス準優勝などの輝かしいキャリアを残している。それほどの実績を持つ者が、日の当たらぬ場所を歩むのはさぞかし苦痛だったろうと思ったが、本人は、「ジュニアのころから自分に才能は感じてなくて、努力してここまで来たと思っているので......」と、穏やかな口調でこちらの先入観を否定した。日々新たなことに取り組み、時には目先の結果に一喜一憂しながら、最終的にはその先を見据えてピースをつなぎ合わせてきたのだろう。そのような歩みを思うと、「長くはなかった」という言葉は、きっと本心なのだろうと素直に受け止められる気がした。

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