元ラグビー日本代表・畠山健介が明かす2015年W杯南ア戦の裏側 フランス大会で日本は 「ベスト8ではないか」 (2ページ目)

  • 齋藤龍太郎●文・撮影 text & photo by Saito Ryutaro

──日本代表がスクラムで無事マイボールをキープし、フェーズを重ねてフィニッシュまでつなぎきりました。WTBカーン・ヘスケス選手が左隅にトライを決め、34-32で歴史的逆転勝利を手にしましたが、畠山さんはその瞬間をどんな思いで見ていましたか?

「目の前に閃光が走り、頭が真っ白になったことを今でもはっきり覚えています。比べることではないかもしれませんが、早稲田で4年生の時に大学選手権で優勝した瞬間がそれに近く、サントリーに入ってからも『おそらくあの瞬間を超えることはないだろう』とずっと思っていましたが、南アフリカ戦の勝利はそれを大きく塗り替えました」

──次のスコットランド戦は歴史的な勝利から中3日という厳しい日程でした。

「思った以上に南アフリカ戦での消耗が激しく、3日間では十分回復しませんでした。戦術的には南アフリカ戦と一緒で『走り勝とう』というプランでしたが、南アフリカ戦と同じパフォーマンスを出せる余力は僕たちには残っていませんでした。ガス欠であの点差(日本10-45)になったのかなと思います」

──しかし、続くサモア戦(日本26-5)、アメリカ戦(日本28-18)は連勝し、決勝トーナメント進出こそ惜しくも逃しましたが、ワールドカップ初の3勝で歴史を作りました。

「南アフリカ戦はいろいろな偶然、奇跡的な要因も重なって勝利した面もありますが、サモア戦に関してはすでに相手が警戒し、日本代表の情報も十分持っている状態でした。それでも自分たちの用意したプランで勝ちったので、僕はサモア戦こそが評価されるべき試合だと思っています」

──前半41分のWTB山田章仁選手のトライ、ラストパスは畠山さんでした。

「今のラグビーではPR15mラインから外側には行かないんです。勝つためにそれぐらいシステマチックにやっています。エディーさんの時代もそういう戦術でしたが、エディーさんのすごいところは選手の判断を『結果が出れば全然問題ないよ』と容認してくれたことです。実際、あの時の自分の感覚、判断は間違っていませんでした。今はどんなチームでもそれが許容されづらい時代なので、あのようなプレーはもう見られないのかなと思うと寂しいですね」

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