ラグビー日本代表に暗雲 稲垣啓太は負け越した国内5連戦に「ボールをロストしてしまうことが多かった」 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【4年前と攻撃スタイルの違い】

 FLが前半早々に退場となって、代わりにWTBがスクラムに入った影響は、やはり大きかったのでないか──。

 スクラムの専門職であるPRの稲垣に問うと、「ないとは言えない」と述べた。そして「一番大事な前3人と、うしろの5人のコネクションが保たれなかった。自分たちのスクラムが組めた時の強さは理解しているが、コミュニケーションミスもあった」と冷静に分析した。

 国内5連戦についても、稲垣はこう総括する。

「ボールをロストしてしまうことが、この5試合ずっと多かった。我々のラグビーにおいて、一番もったいないのはボールロストすること。それを減らしていけば、アタックする機会、ボールを動かす機会は増えていく。そういった部分を改善していきたい」

 4年前のチームと比べて、日本代表は積極的にボールを動かす攻撃を選んだために、タックルを受けつつもボールをつなぐオフロードパスを多用している。ただしその一方で、オフロードパスを使ってボールを動かそうと意識しすぎるあまり、ノックオンも増えているという。

「オフロードパスは、相手の背後まで出られた時に初めて選択肢として生まれる。しかし、ボールをつなぐことばかり考えて、無理な体勢で無理やりオフロードパスをやってしまった結果、ボールをロストしている。無理な状況でオフロードパスはするべきではないと思います。そういった判断が、今日は特によくなかった」

 ワールドカップに過去に2度出場し、日本人PRとして初めてスーパーラグビーでプレーした稲垣は、その豊富な経験をどのようにチームに還元できるか──。そう尋ねると、またも表情を崩すことなくこう答えた。

「苦しい状況になると『あれができない。これもできない』と、いろんなところに手を伸ばそうとします。でも、ラグビーって実はシンプルで、進むべき方向もまたシンプルだと思っています。一番大事にしていることをひとつ、しっかりと直せば、チームはまっすぐに進んでいきます」

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