パナソニックワイルドナイツの歯車を狂わせたのは何だったのか...3連覇の夢は国立で散る (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【名将ディーンズが残した言葉】

 悔やまれるのは後半29分、名手のFB(フルバック)野口竜司がスピアーズのハイパントキックをキャッチミスしたプレーだろうか。その流れからトライを奪われ、15-17の再逆転につながってしまった。

 このシーンについて、坂手は「勝負のアヤがどういう形で進むか、どう転ぶかはわからない。今日はそれがクボタさんに入った。時の運でもある」と言い、堀江も「最後にサイコロ(の目)でクボタが出た。うちのチームでハイボールキャッチが一番うまい(野口)竜司が取れなかったら、誰も取れないのでしょうがない」とチームメイトをかばった。

 ただ、残り10分もあってペナルティゴール1本で逆転できる状況のなか、ラインアウトでのミスやBKの連携ミスも起きてしまった。PR稲垣啓太は「修正できたと思ったら、相手にいいトライを与えてしまった。修正しきれなかったのが敗因だと思います」と語った。

 昨シーズン、ケガによってプレーオフに出場できなかった司令塔の松田は、目を赤くしてその想いを語った。

「悔しさしかない。ワイルドナイツのラグビーを出しきれなかった。プレーの精度で引っ張りたかったが、打開できなかった。今後のラグビー人生につなげていきたい」

 スピアーズの攻守にわたる圧力、そして自分たちで作り出してしまったプレッシャーの前に、最後まで歯車を噛み合わせることができなかったワイルドナイツ。それでも、リーグワンが始まって2シーズン、リーグ戦で通算29勝3敗(コロナ禍の影響による不戦敗ふたつを含む)と無類の強さを誇っている事実に変わりはない。

「これまでやってきたことは、間違えていたわけじゃない。負けてしまったが、何かが変わるわけでもない。これからも自信を持っていきたい。みんなもう1回やり返したいと思っているので、ここに戻ってくるために何をすべきか考えたい」(坂手)

 今回の敗戦から、ワイルドナイツは多くのことを学んだはずだ。来シーズン、さらなる進化を果たして戻ってくることは間違いない。

「We'll Be Back」

 ディーンズ監督は語気を強めて、国立のスタジアムをあとにした。

プロフィール

  • 斉藤健仁

    斉藤健仁 (さいとう・けんじ)

    スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。

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