オールブラックス戦でチーム最多の12得点。早熟と言われたSO山沢拓也の才能がついに開き始めた (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

随所で山沢らしさが輝いた

 ワイルドナイツで結果を出しても、なかなか代表ではチャンスに恵まれなかった。それでも、山沢は「自分らしくプレーする」ことから目を背けなかった。日本代表SOのポジション争いが激しく続くなかでも、「自分ができることをしっかりやっていければいい。いろんなSOの選手がいるが、個性を大事にやっていければ」という言葉を繰り返した。

 山沢にとって、オールブラックス戦は今までのラグビーキャリアのなかで初めて巡ってきた大舞台。10番としてゲームコントロールするだけでなく、プレースキックをすべて決めて、さらには足を使ってトライも挙げた。

 ワイルドナイツで鍛えてきた「山沢らしさ」は、オールブラックス相手にも十分に発揮した。「ティア1」とのデビュー戦は及第点だったと言えよう。

 ただ、山沢の自己採点は「70点」だと言う。「アタックで通用した部分は収穫だったが、ディフェンスではティア1の強さを感じた部分もあり、自分のところでトライを取れたところもあった」と手応えと反省を口にする。

 来年のワールドカップに向けて自信になったのでは?

 そう投げかけると、山沢は「いや......今の自分にとって大きな経験になった」という言葉にとどめた。まだワールドカップを意識しようとせず、11月に敵地で対戦するイングランド代表戦とフランス代表戦に向けて集中力を高めている。これも、山沢らしさ、である。

「再現性がなく、それでも周りに評価されて悩んでいたが、ワイルドナイツに入ってからいろんなものが結びついてきた。早熟と思われていたが(大器)晩成型かな」

 山沢をラグビーに誘った深谷高校時代の恩師、横田典之監督(現・熊谷高校)はこう話していた。その言葉どおり、今、山沢は心身ともに充実期を迎えている。

 課題だったゲームコントロールは年々成長し、山沢自身の個性も出せるようになってきた。また、両足ともにキックを使えて、SOだけでなくバックスリーとしてプレーできることも武器となるだろう。

 ワールドカップまで1年あまり、いよいよ山沢が大きな"桜の花"を咲かそうとしている。

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