【ラグビー】代表候補選手も躍動。
「成長」にこだわる帝京大のワンランク上の強さ

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by AFLO SPORT

今年春には代表に招集された帝京大学の中村亮士今年春には代表に招集された帝京大学の中村亮士 大学選手権4連覇への帝京大の航路は順風満帆のようだ。関東大学対抗戦の全勝対決。岩出雅之監督は今季初めて、意図的に選手の気持ちをたかぶらせた。

 試合前夜と当日朝のミーティングで檄を飛ばし、ロッカールームではこう言って、選手をグラウンドに送りだした。

「試合に出られない仲間の分までタックルしよう。タックル、タックル、タックルだ!」

 監督17年目、54歳の指揮官には頂上体験がある。人心掌握術に長けているだけでなく、どうすれば、チーム力が上がっていくかを熟知している。

 この試合がシーズン6試合目。大学選手権の決勝を見据えた場合、ちょうど折り返しとなる。だから、と監督は試合後、種明かしをしてくれた。

「ここで一度、力ましてゲームに臨ませました。最初から気持ちをフル回転する。力が入り過ぎる感じがあったけど、ゲームの中で学生が覚醒したんじゃないでしょうか」

 覚醒とは、試合のがんばりどころを指すのだろう。駆け引き、勝負勘。粘り強さである。

「ただ興奮させるだけじゃなく、しんどい時にがんばれよということなんです」

 帝京大には「成長」へのこだわりがある。監督がふっと目元を緩めた。

「学生が粘っこくなってきましたね」

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