全米の話題を独占するケイトリン・クラークがWNBA入り 「女性版ステフィン・カリー」が女子スポーツの歴史を変える (4ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【パリ五輪の初戦は日本と対戦】

 全米大学選手権でサウスカロライナ大が優勝の歓喜に湧くなか、同大を3度目の王座に導いたドーン・ステイリーヘッドコーチはコート上でのインタビューでこう話した。

「個人的には、私たちの競技を盛り上げてくれたケイトリン・クラークに感謝したいです。彼女は女子の大学バスケットボールを背負う重責を担ってきましたが、それはここで終わるわけではありません。彼女がWNBAドラフトで全体1位指名を受ければ、今度はWNBAを盛り上げてくれるでしょう。だからケイトリン・クラーク、もしこれを聞いていてくれているなら......あなたは女子バスケットボールの史上最高の選手のひとりです」

 優勝チームの指揮官が相手のいち個人の選手についてこのように言及するのは異例だが、これはクラークがいかに稀代の存在であるかの証左であると言えるだろう。

 クラークはまた、今夏のパリ五輪出場の可能性もありそうだ。全米大学選手権のファイナルフォー(準決勝・決勝)があったために参加はできなかったが、同期間中に行なわれたアメリカ代表候補者合宿にも招集がかかっていた。当人もオリンピックのコートに立つことは夢だと話しており、実現する可能性はありそうだ。

 クラークは2019年と2021年のU19ワールドカップでプレーをしている。両大会に出場した日本との対戦はなかったものの、パリでは予選ラウンドの初戦で両国が対戦することが決まっている。同オリンピックに出場する日本のガードで言えば、宮崎早織(ENEOSサンフラワーズ)や山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)らが選出を確実視されている。

 クラークが出てくるとすれば、宮崎や山本らポイントガード陣がマッチアップするのか、あるいは赤穂ひまわり(デンソー アイリス)のようなサイズと機動力のある選手がつくのか......。歴史を変え得る女子バスケットボール界の衝撃が、日本に上陸する日も遠くない。

【Profile】ケイトリン・クラーク(Caitlin Clark)/2002年1月22日生まれ、米国・アイオワ州出身。身長183cm。故郷のアイオワ大において、2024年春までの間にアメリカの女子カレッジバスケットボール界でセンセーションを起こしたプレーヤー。NBAで188cmという低身長ながらその長距離のシュート力を備えたゲームメーカーとして世界を変えたステフィン・カリー(ウォリアーズ)になぞらえ、実力のみならず人気面でも男子のトップアスリートを超える存在となる。WNBAのドラフトではインディアナ・フィーバーから全体1位指名でを受け、5月から始まるシーズンでデビューする予定。

プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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