パリ五輪女子バスケ世界最終予選MVP・山本麻衣が振り返る、あのプレー「ルーズボールは本能、シュートは冷静に打ちました」 (3ページ目)

  • 三上 太●text by Mikami Futoshi

【カナダ戦の"ヒョイ" シュートの真実】

――カナダ戦の終盤(日本が83-80とリードして迎えた試合時間残り1分からの攻撃)、その宮崎選手からエブリン選手へのアシストが崩れた時に、山本選手がルーズボールを拾ってシュートを打ち、決めました。あれが決定打になったと思いますが、あの一連の動きは本能で体が動いたのですか? それとも状況を冷静に判断した上でボールを拾いに行ったのですか?

「ほぼ本能かな(笑)。ただ、宮崎さんのプレーの特徴を考えたとき、宮崎さんがドライブを仕掛けたところで、パスを出すかもしれないと思っていたので、(自分が)受けられる準備はしていました」

――宮崎選手の狙いはおそらくエブリン選手だったと思いますが、それでも、もしかしたらルーズボールになるかもしれないと?

「はい。もしかしたら、その可能性もあるんじゃないかなと。ただ、最終的にボールに飛びついたのは本能というか、体が勝手に動いたという感じですね」

――帰国後、あのときのシュートを「ヒョイと打った」と言っていましたが、勝手に動いた一連のシュートだったと。

「いや、ボールに反応したのは本能でしたが、最後のシュートのところは相手が大きい選手だとはっきり見えていたので、ブロックされないように、シュートについては冷静に判断をして打ちました」

――難しい体勢からのシュートだったので、シュートのほうが本能かなと思ったけど、逆だったんですね。

「はい、シュートのほうは冷静に判断をして打ちました。普段から、体勢が崩れた時を想定しているわけではないけど、ゴール付近でいろんなバリエーションのシュートを打っているんです。そういう意味でいえば、練習の成果というか、いつもやっているシュートだったから入ったのかなって思っています」

――パリ五輪代表メンバーに関してはこれからまた選考になりますが、ここはあえて選ばれたと仮定して、今度は5人制で出るオリンピックです。今、どのように思い描いていますか?

「前回、3人制でオリンピックに出させてもらって、今回は5人制で出ることになれば、そういう選手ってなかなかいないと思います。だからこそ、自分にしかできないことをやりたいですね。結果が出るにせよ、出ないにせよ、自分のパフォーマンスを表現できるよう、しっかり準備をしたいなって思っています」

――3人制でも5人制でも、という点では、同じくその可能性がある男子の富永啓生選手(ネブラスカ大)とは、お母さん同士が同じチームでプレーしていたそうで、幼い頃から知っているそうですね。

「はい。でも小さい頃にちょっと遊んだという程度ですよ。小学生のときも、中学生のときも全然交流がなくて、高校生になったときに母からその話をされて、『ああ、そうだったね』というくらいの関係です。ただ、そのあたりから連絡を取ることも出てきましたけど、SNSに載せたら、お互いがちょっと反応するくらいですね」

インタビュー後編に続く

【Profile】山本麻衣(やまもと・まい)/1999年10月23日生まれ 広島県出身 愛知県に移り住み、昭和ミニバス、藤浪中学、桜花学園でそれぞれ日本一を経験。高校卒業後、トヨタ自動車アンテロープスへ入社。東京2020オリンピックは3x3女子日本代表として出場し、ベスト8。それ以降は5人制の日本代表に選出されるようになり、中心選手としてプレーしている。精度の高い3ポイントシュートと、海外選手にも当たり負けしないフィジカルの強さが持ち味。また、ここという場面で決めきる勝負強さも光る。オフの日は愛犬モナと遊ぶことが多い。

プロフィール

  • 三上 太

    三上 太 (みかみ・ふとし)

    1973年生まれ、山口県出身。2004年からバスケットボールを中心に取材・執筆をする187センチの大型スポーツライター。著書に「高校バスケは頭脳が9割」(東邦出版)、共著に「子どもがバスケを始めたら読む本」、「必勝不敗 能代工バスケットボール部の軌跡1960-2021」(いずれもベースボール・マガジン社)があり、構成として「走らんか! 福岡第一高校・男子バスケットボール部の流儀」(竹書房)がある。

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