パリ五輪女子バスケ世界最終予選MVP・山本麻衣が振り返る、あのプレー「ルーズボールは本能、シュートは冷静に打ちました」 (2ページ目)

  • 三上 太●text by Mikami Futoshi

【崖っぷちでも冷静にいられた3年前の経験】

――3ポイントシュートは山本選手の武器であり、チームでの役割のひとつでもあります。自分自身の出来をどう振り返りますか?

「コンディションもすごく良くて、フィーリングも良かったので、OQTに関しては、すごく良い状態で臨めたんじゃないかなって思っています」

――そうした状態で臨めた要因はどこにあるのでしょう?

「2021年に東京五輪の出場権を賭けた3x3(スリーエックススリー、3人制バスケットボール)のOQTに出場して、崖っぷちを経験したからこそ、今大会は常に客観的に周りを見られて、余裕を持ってプレーできたと思います」

――東京五輪のOQTは、5人制の女子日本代表も参加していましたが、彼女たちは開催国枠での出場が決まっていました。しかし3x3の女子日本代表には開催国枠の出場権はなく、OQTは文字どおりの予選でした。

「いや、本当に3x3をやっていてよかったなって思っているんです(笑)。あのときの3x3のOQTは20カ国が出場していて、グループラウンドからの決勝トーナメントに勝ち上がり、3位以内に入らないとオリンピックに出られなかったんです。私たちは準決勝でフランスに負けて、3位決定戦で負けたら終わりという、本当の意味で崖っぷちに立って、乗り越えた経験をしたからこそ、あの時の心の持ち方が今回は生きたのかなと思います」

――山本選手は落ち着いていたようですが、2戦目のハンガリー戦に負けて、落ち込んでいる選手もいたと思います。それがカナダ戦ではみんながいい表情でコートに立っていました。何かチームの空気が変わる出来事はあったのでしょうか?

「雰囲気が変わったのはハンガリー戦の翌日、この日は休息日だったのですが、その日の夕方にチームミーティングがあったんです。そこでチームとしてやることを再確認して、そのチームミーティングが終わった後に選手だけで集まって、キャプテンの林(咲希)さん中心に話をして、雰囲気がガラッと変わりました」

――宮崎早織選手が馬瓜エブリン選手に「エブリンが吠えなかったから負けた」と言ったそうですね。

「はい、あれが一番の起爆剤でした。宮崎さんが『エブリンの吠えが足りなかったからだ』と笑いを交えて言ったら、エブリンさんも『それだ!』とわかっていましたし、みんなもまたそれでひとつになれたという感じですね」

エブリン(左)、ステファニー(右)の馬瓜姉妹と五輪出場の喜びを分かち合う photo by FIBAエブリン(左)、ステファニー(右)の馬瓜姉妹と五輪出場の喜びを分かち合う photo by FIBAこの記事に関連する写真を見る

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