渡邊雄太「このメンバーで、ずっとバスケをやっていたい」感動を与えてくれたホーバスジャパンの「旅」はまだ終わらない (3ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

【ホーバスHCが選手たちに求め続けた「信じる力」】

「ホーバスHCが選手たちにモチベーションも自信も持たせてくれる」と富樫は言う。この指揮官の存在なしには「この結果もありえなかった」と振り返った。

「(ワールドカップ)2戦目でフィンランドに勝ったあとの帰りかな。ちょっと一緒になった時間があったんです、(ホーバスHCと)ふたりで。

 その時には僕の目を見て『次の試合に勝ったら次のラウンドに行ける』と。オーストラリアを相手にどこまでやれるか、そして2次ラウンドに進むことがどれだけ厳しいことか、いろんな人がわかっていたと思いますけど、トムさんの目はもう勝つ気でしかなくて。

 その気持ちで、チームも2次ラウンドに進もう、オーストラリアに勝ってオリンピック(出場)を決めようとなっていました。本当にひとつひとつ、そういう言葉が僕も含めてチームを動かしてくれたなと思います」

 ホーキンソンは、いかにホーバスHCが選手たちにコミットメントを求めるかがわかる、こんな話を紹介した。

「彼は我々ひとりひとりに、自分たちの目標を信じているかどうかを聞いてくるのです。僕らが『信じています』と言うまで、次の選手へと移ることはありませんでした。選手たちは自分たちのやっていることを信じています。だからこそ、我々はこのワールドカップで成功を収めることができたわけです」

 カーボベルデ戦の第4クォーター。日本は第3クォーター終了時で18点のリードを築いていた。しかしその後、得点がパッタリと止まってしまい、相手に追い上げを許した。

 この時、日本で開催された2006年の世界選手権(のちにワールドカップへと改称)で、決勝トーナメント行きを逃してしまったことを思い出したファンやメディアもいたことだろう。日本は優勢な状況から金縛りにあったかのように点が入らず、残り1分を切って逆転のシュートを決められ敗戦した。

 当時のジェリコ・パブリセヴィッチHC率いる日本代表でアシスタントコーチを担い、現在は日本協会の技術委員会委員長を務める東野智弥は、世界選手権のこの局面で日本にはまだ確固たる自信が備わっていなかったと振り返る。

「あの時はぜんぜん、信じていなかった。不安とか、恐れとか、負けちゃうんじゃないかとか......そういうのが大きかった。今日も危ない試合ではあったけど、このチームなら大丈夫だと。お互いを信じ、コーチを信じる......このチームにはそういう目に見えない力がものすごくあった」

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