「諸刃の剣」比江島慎が日本を救う 「神がかった」プレーに渡邊雄太は「これくらいできて当然」だから「いつもやってくれ、マコ!」 (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

【ホーバスHCの招集に比江島は「すごく悩んだ」】

「いやもう、本当に決めてくれたマコに感謝です。乗ったら誰も止められない比江島慎、最高です」

 そう言うのは馬場だ。

 彼だって3スティールをマークするなど、ディフェンスでかなり奮闘した(自身がコートに立っている時間帯の得失点差はチーム1位のプラス24だった)が、そこは比江島を立てた。

 吉井裕鷹(SF/アルバルク東京)も開口一番、8歳上の先輩について「世界の比江島でしょう」と述べた。

「あんだけの確率で(シュートを)決めたら......。本当、リスペクトします」

 2019年──。比江島はNBAサマーリーグに挑戦しながら力を出せず、日の丸を背負ったワールドカップでは5戦全敗を喫した。

 このワールドカップで、比江島は平均4.4点に終わっている。どんな夏になったかと報道陣に問われた彼は「自信をなくした夏だった」と、消え入るような声で言葉を絞り出していたのが印象的だった。

 それでも、比江島は代表のユニフォームを着続けた。

 日本は2021年開催の東京オリンピックでも3戦して1度も白星を挙げられず、当時のヘッドコーチだったフリオ・ラマス氏が退任したこともあり、大半の主力メンバーが代表活動から退いていた。

 ラマス氏のあとに就任したトム・ホ―バスHC(ヘッドコーチ)からの呼びかけに、比江島は「すごく悩んだ」という。しかし「まだ世界の舞台で1勝もしていない状態では終われない」という思いが、招集を受けたひとつの理由だった。

 その思いは、結実した。8月27日のフィンランド戦で日本は98-88で勝利し、世界大会での連敗を10で止め、かつヨーロッパ勢からの初白星を勝ち取った。

 このフィンランド戦でも得意のドライブで、とりわけ前半で光った活躍をした比江島だったが、後半の河村勇輝(PG/横浜ビー・コルセアーズ)らのプレーに話題を持っていかれてしまった。しかし、ベネズエラ戦では正真正銘のヒーローとなった。

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