バスケ日本代表は「富樫勇樹のチーム」 それでもW杯出場の12人入りに「危機感はある」と本人が強調するワケ (5ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • 加藤誠夫●撮影 photo by Kato Yoshio

【髙田真希と富樫勇樹の共通点】

 ホーバスHCは以前、自身が読んだ『The Captain Class: The Hidden Force That Creates the World's Greatest Teams』という本を挙げ、バスケットボールに限らず世界で歴史的偉業を打ち立ててきたチームはすぐれたキャプテンがいた──という共通点があると述べた。

 シャイな国民性とも言われる日本では、チームスポーツにおけるリーダーは「言葉で伝えられなくても背中で引っ張る」タイプが多い。しかし、ホーバスHCのチームでは「雄弁さ」も求められる。

「トムさんからは、キャプテンに対する大きな期待じゃないですけど、ほかの選手との違いをすごく感じます。何かあるごとにキャプテンとしての意見を求められることが多々あるので、千葉よりもこの中ではキャプテンだという意識はかなりあります」

 富樫はそう述べている。

 東京オリンピックでホーバスHCは、日本女子代表を率いて史上初の銀メダルに牽引した。この女子代表でのキャプテンはベテランの髙田真希(デンソーアイリス)だったが、彼女も特段に言葉の多い選手ではない。だが、選手としての力量や、ほかの選手たちから受けるリスペクトについては非の打ち所がない。だからこそ、彼女はその役割を与えられたのだ。

「男子では富樫が一緒かなと思いました。(髙田と同様に)選手たちがすごく尊敬していますし、富樫は(大半の選手にとって)先輩で、選手を引っ張る。でも、彼はあまり話をよくする人ではない。だからもっと、彼の力を引き出したいんです」

 富樫のキャプテンとしてのリーダーシップについて問うと、ホーバスHCはそのように答えた。チームを束ねる役割を担うことで選手としての幅や視野が広がるから、というのが理由だ。

 代表ではキャプテンを担っている意識がより強いと言う一方で、富樫はおそらくバスケットボールというチーム競技において、ひとりだけがスポットライトを浴びることに違和感があるのではないか。それでも、彼にはBリーグや日本代表で圧倒的な実績があるだけに、周りは否が応にも彼を特別な存在だと見るし、頼りにもするはずだ。

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