バスケ日本代表は「富樫勇樹のチーム」 それでもW杯出場の12人入りに「危機感はある」と本人が強調するワケ (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • 加藤誠夫●撮影 photo by Kato Yoshio

【小柄PGふたり選出は異例?】

 それにしても、この小柄で童顔な男もいつの間にか29歳と、三十路手前となっていた。

 アメリカのモントローズ・クリスチャン高校卒業後にbjリーグでプロ選手となってから、10年を数える。その間、常にチームを優勝争いまで導き、個人としてもBリーグで初年度から7年連続でベストファイブに選出されるなど、数々の栄誉を受けてきた。

 日本代表にも早くから選出され、ホーバス氏がHCに就任してからは絶対の信頼を受けながら、一貫してエースPGを担ってきた。現在、ワールドカップへ向けて代表候補の一員として合宿と強化試合に臨んでいるが、本番の12人のロスター入りするのは間違いない。

 ところが、富樫が世界大会で先発PGを担ったことはない。

 2019年のワールドカップでは直前の合宿で指を骨折し、メンバー入りができなかった。また2021年の東京オリンピックでは、当時のフリオ・ラマスHCが世界レベルを意識した「大型化」のために本来SGの田中大貴(当時アルバルク東京→現サンロッカーズ渋谷)をPG起用したことで、富樫はバックアップの役割となった。

 そんな苦境を経て、サイズに極端にこだわらないホーバス体制下の日本代表において、ようやく富樫は世界最高峰の舞台に「エースPG」として立つことになる。

 しかし、こちらのそんな「彼は当確だ」の声をよそに、富樫自身は今でも代表の立ち位置について、意外にも「危機感がある」と言う。

「12人(の最終ロスター入り)について、僕はそこに入るかどうかについては正直、けっこう危機感を感じています」

 ワールドカップまで残り1カ月。ナンバー1の実力者・八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)の出場辞退もあって、本番の12人のロスター入りへ向けての代表内での争いは活発化している。一方で、すでに椅子が確定していると思われる選手も数人いて、富樫はそのひとりに数えられている。

 しかし、富樫はその考えに与しない。代表候補には彼(167cm)と、2022-23シーズンのBリーグMVPで実力急上昇中の河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ/172cm)という小柄なPGがふたり入っているが、たった12の枠にそのような選手がふたりも入るとすれば、世界的にはあまりに異例なことだからだ。

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る