松井啓十郎が「グッときた」SLAM DUNKの言葉。「リングしか見えない瞬間って本当にある」 (4ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro

――話を『SLAM DUNK』に戻します。好きなキャラクターはいますか?

「僕はNBAの試合を見るときも、自分がシューターなのでシューターの選手に目が行きがちです。『SLAM DUNK』を読む時もやっぱりシューターが気になりましたね。バスケは背が高く身体能力が高い選手が絶対的に有利ですが、シュート力があれば誰でも活躍できるチャンスがある。海南の宮益(義範)や湘北の木暮(公延)がシュートを決めるシーンを読むと、たくさん練習したんだろうなと感情移入してしまいます。もちろん、"きれいなシュートフォームを持つ"神(宗一郎)も好きです。ただやっぱり"あきらめの悪い男"三井(寿)が一番好きですね。大学時代に井上(雄彦)先生と食事をする機会があったんですが、お願いして色紙に三井を描いてもらったんです。その色紙は今も額に入れて飾ってあります」

――三井の好きなセリフはありますか?

「山王戦で、体力的にギリギリの三井が言った、"オレから3Pをとったら もう何も残らねえ...!""もう俺にはリングしか見えねえ"はグッときましたね。本当に集中している時、どれだけ疲れていても、どれだけディフェンスのブロックが迫っていてもリングしか見えない瞬間って本当にあるんです。そういうときはリングがいつもより大きく見えるし、三井の言葉を借りるなら"落とす気がしねえ"と感じます。ボールをリリースする瞬間に"入る!"と確信しますね」

――最後の質問です。連載終了から四半世紀が経ちながら、今なお『SLAM DUNK』が色あせず読者を惹きつける理由はどこにあると思いますか?

「『SLAM DUNK』の読者の数だけ魅力を感じる部分はあると思います。僕も色々な魅力があると感じますが、読むと高校時代のコーチによく言われた"Team together everyone achieves more"という言葉を思い出します。"チームがひとつになれば、より大きなことを成し遂げることができる"という意味です。

 チームスポーツであるバスケの魅力の一つは、個々では叶わない対戦相手でも、足りない部分を補い合ってチームがひとつになれば勝てる可能性があるということだと思います。それにはチームメイトを信頼することが不可欠。湘北対山王戦のラストシーンで流川が桜木にラストショットを託しましたよね。これで外すならしょうがないと信頼できたからこそ流川は桜木にパスを出した。あのワンプレーに、『SLAM DUNK』の魅力が、そしてバスケットボールというスポーツの魅力が詰まっているように思います」

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