角田裕毅が実力で「11位の壁」を越えた 日本GP10万人の大観衆のなか、鈴鹿サーキットで見事にサクラサク (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【みんな、ありがとう! トップジョブだ!】

 実質13位。このままでは入賞はできない。

 RBはここで先手を打って、53周レースの22周目というかなり早い段階でピットインに出た。それを見て、ライバルたちもアンダーカットを阻止すべく動いた。鈴鹿はタイヤのデグラデーション(性能低下)が大きく、新品に換えれば一気にタイムアップしてライバルを抜くことができるからだ。その結果が、マグヌッセンを先頭とする集団の5台同時ピットインだった。

「そもそも、あそこで入る予定だったんです。でも、僕たちは毎回ピットストップをうまくやっているので、それなりに自信はありました」

 5台が同時にピットインし、RBは3番目で入ってきた角田を先頭で送り出してみせた。

「めちゃくちゃ速かったですね。僕もピットクルーに応えられるように停止位置をしっかりと決めて、あとはメカニックがそれに応えてくれたので、あそこは本当にチームに感謝です。あれがなければ入賞はできませんでしたし、今日の最大のハイライトだったと思います」

素早いピットイン作業で集団の先頭に立った角田裕毅 photo by BOOZY素早いピットイン作業で集団の先頭に立った角田裕毅 photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る ピットボックスを飛び出した瞬間、角田はミラーで後続の4台を見ながら、もうステアリングの無線ボタンを押していた。

「みんな、よくやった! ありがとう! トップジョブだ!」

 こうやってチームに感謝を伝え、チームを鼓舞する術(すべ)もしっかりと身につけた。もちろん、チーム全員で一丸となって、自分のためではなくチームのために戦っているという自覚がしっかりとあるからでもある。

 決勝に向けてガレージにやってきた角田は、すべてのクルーと力強い握手を交わしてからマシンに乗り込んだ。

 だからこそチームクルーも「裕毅のためにがんばろう」と、いつも以上の力を出せる。

 集団の先頭でピットアウトした角田は、ハードタイヤで残り30周のロングスティントを走りきることを念頭に置きながらも、アストンマーティンのランス・ストロールを抑え込んでオーバーテイクのチャンスを与えず、10位を走り続けた。

 追い抜きができないと見たストロールが3ストップ作戦に切り替えてソフトタイヤに履き替え、1周1.5秒速いペースで20秒後方から追いかけてきても、角田は動じなかった。

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