角田裕毅に足りない「狡猾さ」「冷静さ」 中野信治が指摘するF1トップレーサーへの課題「リカルドを意識しすぎている」 (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【新たな日本人F1ドライバー誕生の道筋】

 2024年シーズンは、昨年のスーパーフォーミュラ(SF)チャンピオンの宮田莉朋選手(24歳)がF2に参戦しています。

 トヨタの育成ドライバーの宮田選手が所属するロダン・モータースポーツは、開幕戦でチームメイトのゼイン・マローニ選手が連勝しています。クルマの仕上がりは悪くないので、宮田選手がきちんと経験を積み重ねてくれば表彰台に上がってくると思います。

 僕はSFで宮田選手の走りを何度か見ましたが、すごく速くてうまかった。世界の舞台で活躍する能力はあると思いますし、チームとマシンもすごくいい。しかもチームメイトはザウバー育成のドライバーで能力が高い。彼に勝てなければ、その上のF1には行けないというシンプルな指標があります。

 逆にしっかり結果を出したら、上のクラスに乗せるしかない理由ができます。そのあたりの流れのつくり方は、トヨタはうまいなと感じます。

 トヨタが今後F1にどのように関わっていくのかはわかりませんが、日本人のドライバーがヨーロッパで戦えるチャンスが広がるのはうれしいことですし、我々レース関係者にとっては明るいニュースです。宮田選手の活躍次第で日本人の若いドライバーにとって新しい道が開けてくるかもしれませんので、僕は期待しています。

 ホンダとレッドブルの育成ドライバーの岩佐歩夢選手(22歳)はF2から日本に帰ってきて、SFに参戦することになりました。昨年のリアム・ローソン選手のようにSFで結果を残してF1へのステップアップの道を切り拓こうとしています。

 現在、レッドブルとRBのリザーブドライバーを務めるローソン選手と同じ道を歩めるのかどうか。岩佐選手は、日本で真価を問われるシーズンなりますが、彼は賢いドライバーなのでやるべきことはすでにわかっていると思います。

 岩佐選手はこれまで海外のレースで結果を出してきましたが、レースのシステムが異なる日本でもローソン選手のようにチームメイトを上回るようなパフォーマンスを発揮してチャンピオン争いができるのか。

 彼のチームメイトである野尻智紀選手は、SFで2度のタイトルを獲得する強力なドライバーです。チャンピオン経験者の野尻選手に負けない結果を出せば、「日本にとどまる理由はない」という流れになり、海外で戦う道が再び開けてくると思います。そう周囲が納得するだけの成績を岩佐選手には残してほしいです。

後編<F1日本GPの行方を中野信治が占う......フェルスタッペンの「異次元の走り」を止められるチームはあるか>を読む

前編<中野信治が今季F1の勢力図を詳細解説 「レッドブルで何が一番進化しているかと言えば......」>を読む

【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのカートおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿の副校長として、F1参戦を目指す岩佐歩夢をはじめ、国内外で活躍する若手ドライバーの育成を行なう。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や毎週水曜のF1番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当。

プロフィール

  • 川原田 剛

    川原田 剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

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