角田裕毅を世界中が賞賛 トップ快走は「賭けの1ストップ作戦」から生まれた (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【今季最終戦でドライバー・オブ・ザ・デーに選出】

 成功の可能性が決して高くないことはわかっていた。しかし、可能性がほぼゼロの2ストップ作戦を採るよりも、わずかでも可能性のある1ストップ作戦を採る。これは論理的に考えて、至極真っ当なことだ。

 だから、角田もアルファタウリも、この戦略選択に後悔はない。

 結果的に賭けは失敗に終わったが、ランキング7位という目標だけを真っ直ぐに見て挑んだ賭けである。何かをミスしたわけでもなく、運に左右されたわけでもなく、自分たちの全力を出しきって届かなかったのだから、そこに後悔はひとつもないというわけだ。

角田裕毅の快走に世界中が驚いた photo by BOOZY角田裕毅の快走に世界中が驚いた photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る ランキング7位には届かなかったが、角田は初めてリードラップを記録し、最後までルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)と攻防を繰り広げて抜き返し、8位を守りきった。角田の快走を世界中が賞賛し、角田は24パーセントの得票率で「ドライバー・オブ・ザ・デー」に選出された。

 今シーズン序盤からたびたび見せてきたように、角田にこうしたドライビングスキルはとっくの昔から身についていた。マシンの性能不足やマシントラブル、戦略ミスや角田自身のミスなどで結果につながらないこともあったが、それを完璧にマネジメントして、すべての力を発揮することができた。

 マシンも今回のアップグレードでさらに進化し、レース週末のなかでそれを使いこなすセットアップの方向修正もピタリと決まった。2024年に向けた手応えを掴むこともできた。そしてレース戦略も、目の前の結果ではなく、もっと大きな視野で見て勝負を貫くことができた。

 8位という結果はベストではない。しかし、内容は間違いなく今シーズンベストの走りと、ベストのレース週末運営だった。そしてメキシコのような特殊なサーキットとは違い、一般的な特性のアブダビで上位4チームに次ぐ速さを見せた。

 最下位のマシンを力業(ちからわざ)で走らせ、入賞圏に手が届きそうで届かなかった開幕の頃に比べれば、アルファタウリも角田も見違えるような成長を見せた。2023年のコンストラクターズ選手権7位には手が届かなかったが、晴れやかな表情でシーズンを終えた角田の目には、2024年に向けて確かな光明が映っている。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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