角田裕毅を世界中が賞賛 トップ快走は「賭けの1ストップ作戦」から生まれた (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【トップ4を抜くには1ストップ作戦に賭けるしかなかった】

「タイヤ自体はうまく保たせることはできたんですけど、単純にペースが足りませんでした。ポジションを失うたびに自分の心が傷ついていきましたし、ランキング7位が遠ざかっていくという気持ちもあったんですけど、それでも集中力は切らさなかった。最後までやりきったので、後悔はありません」

 1ストップ作戦で淡々とレースを走りきる戦略と、タイヤを労るよりも攻めてプッシュする2ストップ作戦が入り乱れるのではないか、という読みもあった。しかし、結果的に20台中17台が2ストップ作戦を採った。

 角田も2ストップ作戦を採っていれば、アロンソと戦って彼の前7位でフィニッシュできた可能性は十分にあった。そのチャンスを捨てるような1ストップ作戦に批判の声も上がったが、角田は当たり前だと言わんばかりにそれを否定した。

「6位を獲りにいくための戦略ですね、もちろん。上位勢と同じ戦略を選んでも6位でフィニッシュすることはできないので、チャレンジしたことはよかったと思いますし、戦略自体は悪くなかったと思います」

 アルファタウリにとっては、コンストラクターズ選手権7位奪取がすべてだった。

 つまり、アブダビGP決勝は6位以上になれないのなら、それ以外は何位であろうと同じ。そして予選6位とはいえ、後方からセルジオ・ペレス(レッドブル)が追い上げてくるのだから先行させる必要があり、角田が6位でフィニッシュするためには1台を抜かなければならない。

 その抜かなければならない相手というのは、フェラーリか、メルセデスAMGか、マクラーレンだ。同じ戦略、同じタイヤの真っ向勝負で抜くことは不可能ということは、予選のタイム差を見ればわかる。

 であれば、トップ4チームのマシンを抜くには「1ストップ作戦」に賭けるしかなかった。ステイアウトして一度前に出て、そのポジションを守りきることを目指すしか、アルファタウリがコンストラクターズ選手権7位を獲る方法はなかったのだ。

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