角田裕毅、9位入賞の大逆転劇「汚名返上」の5ポイント獲得で信頼を取り戻す (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【転んでもただでは起きないアルファタウリの戦略】

 計算上、追い着くのが不可能と判断したアルファタウリは、1回目のピットストップ後に生じていたクラッチの不具合がパワーユニットに及ぼすダメージを最小限に抑え、確実にレースを走りきるため、安全モードへの変更を決断する。ペースは0.5〜0.8秒ほど低下を余儀なくされ、9位確保の走りに切り替えてのフィニッシュとなった。

「最後は信頼性の問題もあってプッシュすることができなかったので、かなりパフォーマンスを失っていました。本当ならもっと上に行けたはずでした。ピエール(・ガスリー)はどうだったかわかりませんが、ルイス(・ハミルトン)を捕まえられた可能性はかなりあった」

 ターン10でのハーフスピンや、リスタート直後の攻防でのミス、そしてクラッチ不具合によるピットストップ時の約3.5秒のロスがなければ、ガスリーの前後で7位争いをしていたはずだ。ガスリーを引き離すことができていれば、レース後半はカルロス・サインツ(フェラーリ)との6位争いだったかもしれない。

 しかし前述のとおり、自身のミスは自身のドライビングで取り戻しており、16位スタートとトラブルを抱えながらの走行という難しい状況のなか、9位入賞を果たしたステディな走りと戦略は評価に値する。

 そして、レース週末全体で5ポイントを獲得したことは、チームにとっても、角田にとっても、汚名を返上する値千金の内容と結果だった。

 赤旗で周回遅れとしてのリスタートしかできないとわかった時点で、チームはダニエル・リカルド車にセットアップ変更を施し、予選とスプリントレースで見つけたアイディアを試した。その結果、角田車よりもペースがよく、このデータから得られる知見が今後のレースにさらに生かされることは間違いない。転んでもただでは起きなかった。

 アメリカGPの最終アップデート以来、アルファタウリのマシンは競争力を増し、ライバルたちも警戒心を燃やす。

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