角田裕毅、9位入賞の大逆転劇「汚名返上」の5ポイント獲得で信頼を取り戻す (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【ペースの遅いハミルトンにターゲットを絞ったが...】

 このハーフスピンで約5秒をロスし、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)の先行を許したが、その後のハイペースで前の集団とのギャップを再び2.7秒まで縮めた。スピン前のギャップが2.0秒だったことを見れば、実はここでのロスはそれほど大きな痛手にはなっていない。

 ミディアムタイヤを履いた第2スティントは、ガスリーよりも速いペースでさらにギャップを縮めていった。これに対し、アンダーカットを警戒したガスリーは残り25周という早いタイミングで2度目のピットインをする。

 このまま角田が翌周にピットインすれば、ガスリーを抜けないままレースが終わってしまう。アルピーヌはストレートが速いため、コース上で抜くにはタイヤの差が必要となる。

 そこで角田はガスリーのペースを見ながら、可能なかぎりピットストップを遅らせて最後にフレッシュなタイヤを履き、そのタイヤ差を利用してガスリーを抜く戦略を採った。置かれた状況のなかでは、その判断が唯一の正解だったと言える。

 だが、ソフトに履き替えたガスリーのペースは思いのほか速く、一気にギャップが広がっていく。この時点でガスリーを逆転するのが現実的でないことは明らかで、アルファタウリのターゲットはガスリーではなく、ソフトでもペースの遅いハミルトンを逆転することに絞った。

 55周目まで引っ張り、彼らより9周もフレッシュなタイヤを履いて最後に猛追を見せる──それがアルファタウリの狙いだった。だが、9周差があってもガスリーとのペース差は0.3秒、もっと苦しいと思われたハミルトンと比べても0.4〜0.6秒ほどのアドバンテージしかなく、9周ステイアウトの間に13.8秒まで広がったギャップを挽回するには十分ではなかった。

 つまり、ソフトタイヤでの自分たちのペースが、思ったほど速くなかったのだ。いや、正しくは、スプリントで苦戦したアルピーヌやメルセデスAMGが決勝には可能なかぎりの修正をしてきた、と言うべきだろう。

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