「クレイジーボーイ」佐々木歩夢の走りに4万人のファンが歓喜 1998年以来の最軽量クラス年間王者なるか (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

【来季はMoto2クラスへ昇格することを発表】

 一方、今回のレースで優勝を飾ったマシアはチャンピオン争いで首位に立ったものの、ごくわずかのポイント差で背後につける佐々木とオルガドに対して警戒感を緩めてはいない。

「歩夢は、去年もずっと力強い走りをしてきた選手なので、強力なライバル。ダニーも、皆を驚かせるような走りをずっと続けている。

 でも、ぼく自身にも強さはあると思っている。自分がクラス最強だとは思わないけれども、毎戦、力強く戦えているし、ずっといいフィーリングで走れているので、これからもこの調子を維持していきたい」

 次戦は2週間後に控える第15戦インドネシアGP。その後、オーストラリア、タイ、マレーシア、カタールとレースが続き、最終戦のスペイン・バレンシアまで6レースを争う。

 この6戦に向けて、佐々木は「注意しなければならないのは、マシアですね」と話す。

「彼の所属するLeopard Racingは、毎年、アジアラウンドに入るとメチャクチャ速くなるんですよ。過去のデータや結果を見直してみても、あのチームはアジアに入ると、なんでかわからないけどすごく生き生きしてきて、ホントに速くなる。

 でも、自分もアジアは得意なコースばかりなので、カタールまでにどれだけポイントを稼いで最終戦を迎えるか。そこが勝負になると思います」

 今回の日本GPの週末では、佐々木は決勝前日の土曜日に、翌年からMoto2クラスへ昇格することを発表した。そのステップアップを最高の形で飾りたいと考えるのは、佐々木自身とチームはもちろんとして、その活躍を応援するファン全員の願いでもあるだろう。

 かつての最軽量クラスでは、1990年代に多くの日本人ライダーが席捲した。しかし、チャンピオン獲得は1998年の坂田和人以降、長く途絶えている。それ以降は、宇井陽一が王座を近くまでたぐり寄せ、東雅雄が肉薄、2000年代には高い資質を備えた小山知良に期待がかかったが、誰もそこには到達できなかった。

 そして今、佐々木はその場所からもっとも近いところで、ライバルたちと激しい争いを繰り広げている。ここから先のシーズン終盤6戦は、彼らの戦いを見守る日本のファンにとっても、緊張感と興奮が1戦ごとにさらに高まってゆくことだろう。

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