ホンダがトヨタと日産を猛追! お膝元・鈴鹿での5年ぶり勝利で驚異の巻き返しへ (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【NSX-GTとともにチャンピオンを獲りたい】

 その後は懸案だったピット作業違反もなく、16号車が順位を守りきって念願のチェッカードフラッグを受けた。折れそうになったメンタルを必死に支え、ついに掴んだ今季初勝利。福住は「激戦のGT500クラスで味わってきた苦い経験が糧になった」と語る。

「GT500クラスに乗った最初の年もすごく苦労して、勝てそうで勝てないレースが続いたこともありました。正直、今年もそういう感じで、パフォーマンスはありながらも結果を残すことができなかった。なによりよりNSX-GTの鈴鹿ラストランで勝てたというのは、すごく大きかったと思います」(福住)

 一方の大津は、GT300クラス時代を含めてスーパーGTでの記念すべき初優勝。ただ、うれしさよりも「ようやく勝てた」という安堵の気持ちのほうが強い様子だった。

「ポテンシャルはあって、勝てそうなところにいたのに、結果につながらないことが続いていました。このもどかしさはチームみんなで感じていたと思うので、うれしいもあるんですけど、ホッとしています」

 そんな大津にとって、今年で参戦終了となるNSX-GTは思い入れのある1台だと語る。

「僕のなかで(NSX-GTは)"節目になる時に乗っているクルマ"です。実績がないにもかかわらず道上龍さんのチームで乗れたのもGT3のNSXでしたし、GT500に上がる時もすごくいいタイミングが重なり、中嶋悟さんのチームに入れてもらえました。そして、今回の初優勝の時に乗っていたクルマもNSX。このクルマとともにチャンピオンを獲りたいなと思います」

 今回の優勝によって16号車の福住/大津組は合計37ポイントとし、首位から12ポイント差のランキング3番手につけた。残り3戦の舞台となる第6戦のスポーツランドSUGO、第7戦のオートポリス、そして第8戦のモビリティリゾートもてぎは、すべてホンダNSX-GTが得意としているコース。十分に逆転可能な範囲とも言える。

 今シーズンの前半戦、ホンダ勢はトヨタと日産の後塵を拝する格好となっていた。しかし昨年と同じように「後半戦からの巻き返し」を見せることになれば、2023年のチャンピオン争いはさらに面白くなるだろう。

プロフィール

  • 吉田知弘

    吉田知弘 (よした・ともひろ)

    モータースポーツジャーナリスト。1984年12月19日生まれ、石川県出身。2011年よりスーパーGT、スーパーフォーミュラなど国内4輪レースを中心に取材。専門誌やweb媒体などで執筆中。日本モータースポーツ記者会所属。

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