ホンダがトヨタと日産を猛追! お膝元・鈴鹿での5年ぶり勝利で驚異の巻き返しへ (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【瞬時の決断で30秒以上ものアドバンテージ】

 そのARTAは前評判どおり、開幕戦から上位に食い込む速さを見せ、勝利も時間の問題かと思われた。だが、レース中に細かなミスが相次ぎ、4戦を終えて最上位は3位とまり。

 特にチームを引っ張る16号車は、歯車が噛み合っていなかった。表彰台圏内で争う走りを毎回見せるものの、富士スピードウェイで行なわれた第2戦と第4戦ではピット作業違反によるペナルティを受けて順位を下げてしまい、開幕戦・岡山でも別のペナルティでポイントを取りこぼすなど、厳しい結果が続いていた。

 それでもチームとドライバーは勝利に向かって、挑戦をあきらめることはなかった。ミス再発防止の対策を講じ、不測の事態に備えた戦略も数パターン用意。チームのがんばりに応えるように、第5戦の予選Q2では福住仁嶺が接戦の末にポールポジションを奪い取ってきた。

 そして日曜日の決勝でも、序盤から16号車の勢いは右肩上がり。さらには11周目に起きたアクシデントを見て、フルコースイエロー(※)が出される前に1回目のピットストップを即断で敢行。これが功を奏し、レース中盤には30秒以上ものアドバンテージを得た。

※=アクシデント車両を回収するためにコース全域が追い越し禁止&時速80km制限になった状態。導入後のピットインも禁止。

 ところが、レース中盤になって思わぬ事実が判明する。イレギュラーのタイミングを早めた1回目のピットで、予定していた量の燃料を補給できていなかったのだ。このままのペースで走り続ければ、ゴールの2〜3周手前でガス欠となる。

 またしても16号車に暗雲が......そんな不穏な空気に包まれた時、危機的状況を冷静に対処したのが今季ARTAに加入した大津弘樹だった。

「燃料が足りない可能性が出てきたとチームから言われて『マージンを切り崩してもいいから燃費を稼いでくれ』との指示を受けました」と大津はその時の状況を語る。

 ペースを落としすぎると、ライバルに逆転される可能性もある。その微妙な塩梅が難しいところではあるのだが、大津は必要最低限のペースダウンで燃費を稼ぎ、どうにかポジションを死守。そしてトップのまま、エースの福住にバトンを託した。

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