中野信治に聞くなぜフェルスタッペンはここまで強いのか?レッドブルのマシン特性から考察 (4ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【最多勝記録の更新は間違いない】

 一方のフェルスタッペンは、ペレスが迷路に入り込んでいる間に、自分の走りを今年のクルマに完全に合わせこんできました。今のフェルスタッペンはレッドブルのマシンを完璧に乗りこなしています。

 一見すると普通に走っているように見えますが、決勝では、前後のマシンとのギャップや路面状況などをすべて計算し、タイヤを守りながら限界ギリギリのところで走っている。あそこまで完全にコントロールされてしまったら、もう誰もかなわないですね。

 ペレスは今、チャンピオン争いから完全に外れて、ようやく余裕が出てきました。夏休み前の第12戦ハンガリーGPと第13戦ベルギーGPでは表彰台に上がり、本来の走りに戻りつつあります。

 前半戦を終えた時点でのドライバーズポイントは、首位のフェルスタッペンが319点で、ランキング2位のペレスは189点。この差はもういかんともしがたい。両者の間にこれだけの大差がついてしまったのは、純粋にドライバーの能力の差なのかなと感じます。

 とはいえ、ペレス以外のドライバーがレッドブルのマシンに乗ったとしても、今のフェルスタッペンに近づくことは難しいと思います。それぐらい今のフェルスタッペンは乗れているんです。

 昨年、フェルスタッペンは全22戦中15勝を挙げ、それまでミハエル・シューマッハ(2004年)とセバスチャン・ベッテル(2013年)が持っていた13勝という年間最多勝記録を更新しました。今年もフェルスタッペンは自らの最多勝記録を間違いなく更新してくるでしょう。(つづく)

中編<F1角田裕毅とF2岩佐歩夢の変化に中野信治が驚き「人間はここまで変わるんだな」>を読む

後編<F1レッドブルの連勝を止めるのはハミルトンかルクレールか「化ける可能性がある」若手か? >を読む


【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのカートおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(前・鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として、現在F2選手権に参戦する岩佐歩夢をはじめ国内外で活躍する若手ドライバーの育成を行なう。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や毎週水曜日のF1番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当。

プロフィール

  • 川原田 剛

    川原田 剛 (かわらだ・つよし)

    1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る