F1復帰に向けてホンダの開発は遅れ気味も間に合うのか 世界一のパワーユニットを作った技術力に確固たる自信あり (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by HRC

【第4期は初期トラブルが多発】

 続けて角田LPLは語る。

「フルブレーキング時以外はほぼ全開で走らなければならない、というかたちになります。つまり、フルブレーキングからコーナーを曲がり始めたパーシャルスロットルの状態でも、エンジンは全開でMGU-Kから発電する、発電することでブレーキを掛けてトルクをコントロールするということになります。

 コーナリング中に一生懸命MGU-Kから発電して、バッテリーに充電するというわけです。なので、燃料のエネルギーは30%減るんですが、全開率はかなり上がります。たとえばモンツァでは、おそらく全開率が90%くらいになります」

 現在はテスト時間規制のない単気筒でのベンチテストを中心に開発テストを進めており、並行して2021年型をベースにMGU-Hを取り外した暫定型を仕立て、エンジン挙動の学習を進めている。

 サステナブル燃料は世界最大の石油エネルギー企業であるサウジアラビア国営のアラムコとタッグを組んで開発することになるが、アラムコにはすでに他メーカーの経験者が加入しているほか、今季からはF2およびF3に55%サステナブルフューエルを供給している。ホンダもこれまでエクソンモービルとF1燃料を共同開発してきた先進技術研究所がノウハウを持っている。

 120kW(約160馬力)から350kWへと約3倍になるMGU-Kも、すでに試作機ができており、ベンチテストが着々と進められてさらなる高効率化、熱によるロスの低減が進められている。

「モーターとしては、小さくて発熱が低いものが勝負どころになります。あとは、モーターで発電したエネルギーがバッテリーやコントローラーを通ってまた出て行った時、それぞれ少しずつ目減りしてしまうんですが、それが目減りしないようにすること、バッテリーの劣化をいかに抑えて新品と同じくらいにキープできるかで、けっこう大きな差が出てくると思います」

 MGU-Kの駆動系は、第4期の初期にトラブルが多発して苦労した領域であるため、2026年の参戦を見据えてかなり先行開発を進めていたという。2021年かぎりで撤退したあとも、技術者をHRC Sakuraに残して基礎研究を続けていたのは、この分野だ。

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