F1復帰に向けてホンダの開発は遅れ気味も間に合うのか 世界一のパワーユニットを作った技術力に確固たる自信あり (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by HRC

ホンダPUの開発を統括する角田哲史LPLホンダPUの開発を統括する角田哲史LPLこの記事に関連する写真を見る

【MGU-Hが廃止される影響は?】

「シリンダーの中の圧力センサーというのはものすごく高額なんですが、これはもう使うのをやめようという規則になりました。我々のエンジン(の高速燃焼)はこのセンサーをうまく使って制御をしているんですが、これがなくなると制御をどうしていくのかというのが課題になります。

 それと共通部品に関して言えば、たとえばインジェクターはメーカーが違えば噴霧の形が違いますので、非常に短い時間でバルブを開け閉めする中では大きな変化になります。もし今、使っているのと別メーカーのインジェクターになると、そこへのマッチングもしていかなければならなくなります」

 高速燃焼技術を取り上げられた格好になり、別の方法でそれを実現することを模索していかなければならない。

「我々としてはかなり痛手です。しかし我々としては、与えられた環境(2026年規定)で高速燃焼をもう1回、作り出したいと思っています。ただ、物理的に弱体化するのは避けられないので、いろんな燃焼形態をトライしている最中です」

 そのほかにも、MGU-H(※)が廃止される影響もある。MGU-Hのモーターを使ってタービンを回し、ターボラグを抑えるEブーストが使えなくなるため、エンジンのトルク特性や制御も対応が迫られる。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 それに加えて、1周あたり9MJという現行の4.5倍ものエネルギーをMGU-Kから発電しなければならない。ブレーキング時の制動力だけでは到底足りないため、加速時やコーナリング時などパーシャルスロットル時にもエンジンを全開にし、MGU-Kの抵抗によって発電しつつトルクをコントロールするという特殊な制御が必要になる。エンジンの全開率は90%にも達し、耐久性も求められることになる。

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