ホンダがアストンマーティンを相棒に選んだ決め手とは? そのオファー内容は群を抜いていた (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by HRC

【今度こそ期待を裏切らない?】

 参戦当初は技術的にもアストンマーティンとの提携に専念する予定だが、将来的にはカスタマー供給も可能であり、そうすれば収益性はさらに向上すると見られている。それ以外にもHRCブランドを使ったビジネスでHRC単独での収益性を上げ、ホンダからの支援に左右されずともF1活動を継続していける体制の強化を図っていく。

 ホンダが2021年かぎりでF1から撤退したあとも、HRCは2022年型パワーユニットを設計・製造し、レッドブルパワートレインズにパワーユニットを供給して運営も行なってきた。

 2025年までは開発が凍結されて開発部隊は縮小されたとはいっても、レースのオペレーションやベンチテストによるセッティング作業など、現場とファクトリーの両面で運営を担い、実質的に2021年までとまったく変わらない体制でF1活動を続けていた(現場運営スタッフの約半数を占める現地雇用組がレッドブルパワートレインズに転籍したのみ)。

 そして、開発スタッフも一部はHRC Sakuraに残り、2026年規定を見据えた先行基礎開発を継続していた。

 つまり、ホンダは表向きは撤退していても、HRCとしてプロジェクトを継続し、F1への情熱は燃やし続けていた。

 第3期を終えてすべてを清算してしまったことで、第4期の起ち上がりで多大な苦労を味わった苦い経験があったからこそ、いずれやってくるF1復帰に向けて、その火は絶やしていなかったのだ。だからこそ、2026年に来たる第5期は「初年度から勝ちを狙いに行く」と胸を張って言うことができる。

 これまで第3期、第4期と、期待しては裏切られ、自分たちの好きだったホンダはどこに行ってしまったんだと感じていたファンは少なからずいたはずだ。何を隠そう、筆者自身がそうだった。開発や運営にあたる技術者たちの情熱は変わらなくても、大企業の経営的観点で右往左往を繰り返すたびに落胆させられてきた。

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