角田裕毅がベルギーで見せた成長と取り戻した自信「プッシュし続けよう!」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【リカルドから見て学んだこと】

 完全にスリップストリームに入られた38周目のターン5でも、ブレーキングを完了してうまく抑えきったかに思われたが、そこからターンインでオコンがアウトから巧みにスピードを残してスペースにかぶせてきた。これに対して、角田は深追いせず、引いた。

「アルピーヌはかなり速かったですし、まだうしろにもガスリーが控えていたので、タイヤをできるだけセーブすることにしました。あそこは押し出すと5秒加算ペナルティを科される可能性もありえましたし」

 タイヤマネージメントを考えろ──というのは、エンジニアからも指示されていた。ここで無理をせずタイヤをいたわったからこそ、後方を走るガスリーに追いつかれることなく走りきれたとも言える。

 そしてなにより、あのスペインGPで周冠宇(ジョウ・グアンユー/アルファロメオ)を押し出したとして5秒加算ペナルティを科され、9位入賞を掴み損ねた苦い経験から、しっかりと学んで結果に結びつけることができた。

 角田としては戦いたかっただろうし、戦える力もあっただろう。だが、その気持ちをグッと抑えて、ポイント獲得というもうひとつ先のターゲットに目を向けることができた。これは大きな成長だったと言える。

 ブレーキトラブルで9位を失ったモナコGP、そしてペナルティで9位を失ったスペインGPからバランスを崩し、チームも角田自身も細かなミスが散見されるようになってしまった。シーズン序盤のマシン性能をすべて出しきったレースとは別人のようになってしまっていた。

 その自分たちの姿と向き合い、改善し、再び完璧で「ファンタスティック」な角田が戻ってきた。チームもそれに応えた。

 事実、レース中の角田はこれまでになく細かく、丁寧にタイヤの状況をエンジニアに伝え、エンジニアも角田に寄り添うように情報を伝え続けた。土曜のスプリントレース前には、予想される展開とそれに対する自身の希望や提案を伝えたりと、角田のコミュニケーションは明らかに変わっていた。

 それは間違いなく、前戦ハンガリーGPでチームに加入したダニエル・リカルドの振る舞いを見て学び、成長したところだろう。

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