角田裕毅11位ノーポイントであってもキャリアベストの走り「本当に、本当に、いいレースだった」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【すべてを出しきって悔いなし】

 あっという間に11位に浮上し、残り8周で10位のケビン・マグヌッセン(ハース)は5秒前方。さすがに追いつけないかと思われる距離だが、角田はあきらめなかった。うしろからは遥かにマシン性能に優るはずのアストンマーティンのランス・ストロールが追いかけてきたが、そんなことは気にしてもいなかったという。

「そんなに意識はしてなかったですね、前だけを見ていたので。最後の最後はストロールも迫ってきましたけど、10位が目の前にあったので、うしろよりも前だけを意識してレースをしていました」

 タイヤをいたわりながら、攻めるべき時には鋭く攻め、ミスを犯さず、マシンのすべてを出しきる。計算上は届かないとわかっていても、目の前に見えた入賞の可能性に賭けて、最後まで全力でプッシュし続ける。

 ドリンクボタンが機能せず、高温多湿のタフな環境だったにもかかわらず、最後まで気力を失うことなく攻め続けた。それは今季からトレーニングを強化し、肉体を進化させてきた結果でもある。

「そうですね、それ(ドリンクが飲めなかったこと)もけっこうきましたね。暑いし全体的につらかったですけど、今年トレーニングを強化してきたのが最後までパフォーマンスを維持するのに効いたと思います」

 最後はマグヌッセンに1.364秒届かず11位。リザルトとしては1ポイントも得られなくても、角田は自分たちにできうるかぎりのレースはした。

「本当に、本当に、いいレースだった」

 レースエンジニアのマッティア・スピニも、角田を讃えるように言った。

 角田自身も、自分たちのすべてを出しきったのだから、悔いはなかった。

「自分自身としてはもうすべて出しきりましたし、しょうがないと思います。ドライバーとしてはマシンのパフォーマンスをすべて出しきる以上にできることはありませんし、今年はここまですべてのレースで自分の力を出しきれているなと思います。これ以上は特にないと思います」

 結果はノーポイント11位でしかない。しかしドライビングの腕としても、最後まであきらめず攻め続けた精神力としても、間違いなく角田のキャリアベストのレースだった。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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