「あそこは絶対に引けなかった」角田裕毅がサイドバイサイドでマクラーレンを押さえ込んだドライビングはリーダーの証 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【実力で奪い取った1ポイント】

「とにかくミスをしないように、常に前走車のDRS圏内にとどまるように心がけて走っていました。マクラーレンとはペースが同じようでも、セクター2は少し向こうのほうが速いなと感じました。ただ、その後のストレートで追いつけてはいたので、よかったですね」

 最後はオコンとヒュルケンベルグがピットインして、角田はもとの10位に復帰。予選から決勝まで、実力で掴み取った価値ある入賞だった。結果的に、リスタート直後のピアストリとの攻防が入賞を分けたとも言える。

アルファタウリのエースらしくなった角田裕毅アルファタウリのエースらしくなった角田裕毅この記事に関連する写真を見る「もちろん、いい気分です。本当は7〜8位を狙っていましたけど、ポイント獲得で終えることができたことは大きいですし、最低限のいいレースができたと思います。

 特に昨日クラッシュがあったので、チームスタッフに修復してもらった分の恩返しもできたかなと思っています。たった1ポイントですけど、この1ポイントは僕らにとってはとても大きいですし、今後もこういうレースを続けていく必要があると思っています」

 チームの想像以上のパフォーマンスを見せたマシンは、着実に進化してはいるものの、根本的な部分がすべて改善されたわけではない。長いストレートと100km/h以下の中低速コーナーしかないバクーでは、このマシンの弱点が見えにくくなっただけだ。

 しかし、数少ないチャンスでマシンと自分自身の実力をすべて引き出し、ライバルの自滅がなくとも実力でポイントを持ち帰る。この1ポイントは、アルファタウリにとっても角田にとっても、非常に重みのある1点になった。

「特に予選であそこまでのパフォーマンスというのは、正直ここのサーキットだけだろうと思っています。あまり高く予想はしないように、期待はしないようにしています。まだまだマシンの開発が必要だと思いますし、僕もそれを手助けできるように頑張りたいと思っています」

 そう語る角田の目には、チームリーダーとしての自覚と自信がはっきりと宿っていた。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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