F1へのステップアップは確定? デビューウィンを飾ったリアム・ローソンの実力に2連覇中の王者も「速いよ...」と脱帽 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【2年連続王者の野尻が...】

 しかし、ローソンが無理に仕掛けることはない。そして中盤戦へと突入すると、義務となっている1回のタイヤ交換を野尻より先に済ませる作戦に出た。一方、これを知った野尻は一気にペースを上げて翌周にピットインを敢行し、ローソンの逆転を阻止しようとする。

 この時、ローソンはタイヤのウォーミングアップが済んでおらず、多くのドライバーが苦戦を強いられるピットアウト直後「アウトラップ」の最中。それもかかわらずローソンはハイペースで周回し、逆にタイヤ交換直後でスピードの乗らない野尻を捉えて逆転に成功した。

 さらにローソンは、ここで勝負に出る。厳しい状況のなかで2周続けてファステストラップを更新し、あっという間に野尻を5秒後方まで引き離したのだ。

 レース終盤に後続でアクシデントがあり、セーフティカーが導入されて築いた差はリセットされてしまったものの、ローソンの圧巻の走りは誰もが驚愕した。そして、最後までセーフティカーが解除されないままレースは終了となり、ローソンが見事にデビューウィンを飾った。

「デビュー戦で優勝できるなんて、本当に信じられない気持ちだ。正直、レース前はお腹が痛くなるくらい緊張したけど(笑)、すばらしいレースをすることができた。クルマのバランスも非常によくて、最高の状態で僕を送り出してくれたTEAM MUGENに感謝している」(ローソン)

 開幕戦でまさかの"黒星"を喫した野尻は、2016年にチームメイトとして戦ったバンドーンと重ね合わせ、ローソンの実力を改めて認めた。

「ストフェル(バンドーン)も日本に来ていきなり速かったし、リアムも(最初から)それなりの選手だとは思っていましたが......『やっぱりそうだよね』という感じです。今年3連覇を獲るためにも、やっつけなきゃいけない相手なのだと思います」

 2年連続でチャンピオンを獲得した野尻としては、日本の舞台で初めてレースをする海外ドライバーに負けた心境は複雑だろう。「ここで彼に負けたら『今のスーパーフォーミュラ(のレベル)はどうなんだ?』と言われそうな気がするので負けてはいけないのですが、正直『けっこう速いよ......』と思っています(笑)」と本音をこぼす場面も見られた。

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