F1へのステップアップは確定? デビューウィンを飾ったリアム・ローソンの実力に2連覇中の王者も「速いよ...」と脱帽 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【ぶっつけ本番でコースイン】

 例年なら開幕直前に、富士スピードウェイで公式テストが行なわれる。しかし今年は、シーズン序盤の過密日程を回避するために実施されず。さらに唯一の練習機会となるはずだった前日(4月7日)のフリー走行も、悪天候によって中止となっていた。

 予選前の練習時間が限られていることは覚悟の上で臨んだローソンでも、さすがに"ぶっつけ本番"は想定外。「(第1戦の)前夜は緊張で眠ることができなかった。予選前は特に神経質になっていたなと、自分でも感じるよ」とローソン本人も語っていた。

 予選前のローソンから漂う雰囲気は「開幕前のテスト時と明らかに違っていた」と、チーム関係者も言う。しかし、緊張や焦りに押しつぶされることなく、現状置かれた課題を瞬時に分析し、それを速さにつなげた実力はさすがとしか言いようがない。

「予選方式がノックアウト(勝ち抜け)から45分の計時予選(時間内に自由に走行してベストタイム順でグリッドが決定)に変わったので、まずはコースに慣れることに集中するための時間を作った。そこで得た経験をもとに、最後は必死にタイムを更新していった」(ローソン)

 限られた状況下を言い訳にせず、自分自身で打開策を見つけ、結果につなげていく──。かつてのバンドーンやガスリーなど、のちにF1のシートを掴んでいったドライバーたちがスーパーフォーミュラの現場で実践していたことを、ローソンはまったく同じようにやっていた。

 予選と同じ日に行なわれる決勝レース。スタート前のグリッドでTEAM MUGENの田中洋克監督に話しかけると「本当にローソンはすごい!」と興奮していた。しかし、我々が本当に驚かされたのは、その数時間後だった。

 レースは序盤からアクシデントが続出する波乱の展開。だが、ローソンは新人らしからぬ冷静なドライブで周回を重ねていった。8周目には大湯都史樹(TGM Grand Prix)を追い抜いて2番手に浮上。さらにトップを走るチームメイトでスーパーフォーミュラ2連覇中の野尻智紀(TEAM MUGEN)の背後に迫った。

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