亡き監督に捧げる待望のポールトゥウィン...スーパーGTに日産のエースナンバー「23番」が帰ってきた (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【日産の23番は負けられない】

 最終的にポールポジションを奪ったのは、日産のエースチーム23号車。最後のタイムアタックを担当した松田が自身の記録したタイムでポールを獲得したのは、およそ13年ぶりのこと。その瞬間、23号車のピットは歓喜に包まれた。

 日曜日の決勝は、天候が目まぐるしく変わり、ひとつの判断ミスで順位が大きく変わってしまう難しいレース展開となった。そのなかでポールポジションからスタートした23号車は、冷静に状況を判断しながらスリックタイヤからウエットタイヤに交換し、周回を重ねていった。

 勝敗を分けたのは、一度は晴れ間が差していた岡山国際サーキットに再び雨雲が接近し、雨が降り始めてきた時の判断だ。雨が強くなると判断した23号車の松田は、すぐにチームと連絡を取ってピットインを決断。そして同時に、ウエットタイヤへの交換を要求した。

 この動きによって23号車は6番手までポジションを下げるも、その後、瞬く間に大雨となる。ライバルチームは急激な豪雨で大混乱となり、優勝を争っていた36号車はタイヤを固定する前にピットアウトしてしまうミスを犯して脱落した。

 その間に23号車は再びトップに返り咲く。その後も雨足は弱まることなく、コース付近への落雷が何度も確認されて最後はレース途中での赤旗終了。結果、トップを守りきった23号車が見事に2023シーズンの初戦を制した。

 レース後、マシンを降りてきた松田は興奮冷めやらぬ表情で、目にも少し涙を浮かべているようだった。相方のクインタレッリもガッツポーズで感情を表現し、いつも以上に喜びを爆発させていたのが印象的だった。

 それもそのはず。2014年からコンビを組み、日産陣営のエースナンバーである「ゼッケン23」を背負う彼らはこの1年、長い苦悩の日々を過ごしていたからだ。

 スーパーGTの日産系チームにおいて「23番」というのは、負けが許されないくらい特別なポジションである。特に新型マシンが投入されたシーズンの年間王者は「必達目標」とされるほど、23番を駆るドライバーにかかるプレッシャーは大きい。

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