ホンダがホンダであるために「やる、辞めるの繰り返しじゃダメなんです」...2026年再始動に向けて「心が動く」要素は揃った (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【復帰に向けて水面下で交渉?】

 ただし2026年に参戦するのならば、提携先のチームは2025年の初頭までに決まっていなければ、マシン設計に間に合わない。実際にはもっと早い段階で多くのチームがPUマニュファクチャラーと契約を交わすと思われ、HRCに残された時間はそれほど多くない。

「2026年にどうなるかということで言えば、残された時間はものすごく少ないですし、やるとしても選択肢は限られてくると思います。ただし、この先もずっとそうしていくと決めつける必要はないと思っています」

 仮に2026年に間に合わなかったとしても、2027年以降に参戦する可能性もあると渡辺社長は言う。

 開幕戦バーレーンGPで現地を訪れ、今後もF1の現場には度々やってくる予定だという。もちろん、そこでは現行パートナーのレッドブルに配慮しつつも、他チームとの交渉を進めていくことになる。

 そして、ホンダ本社からいつゴーサインが出ても構わないように、HRCでは2026年レギュレーションに沿った研究開発を着実に進めている。

「2026年規定では出力の半分(350kW)をモーターとバッテリーが出すことになりますから、そちらが圧倒的に重要になってきます。じゃあ残されたエンジンが重要じゃないかというと、そんなことはなくて、馬力は落とされますが、だからこそそこの差が勝負を分ける可能性もあると思っています。

 そのどちらも、ホンダが得意としている技術です。だから(参戦の)判断が下ればいつでも何でもできるように準備するのが、技術屋としての責務だと思っています」(浅木泰昭・四輪レース開発部長)

 自社開発バッテリーを軸とした電動領域のアドバンテージは、ホンダの売りのひとつである。さらに2026年に導入される100%カーボンニュートラル燃料も、実はホンダが2021年からすでに実用化している技術。この分野でもアドバンテージがあると浅木は言う。

「エンジンは燃料が変わることで馬力は下げられます。しかし、カーボンニュートラル燃料の開発能力やそれに合った燃焼の開発能力といったところで、差が出てくることになると思います。

 カーボンニュートラル燃料をきちんと開発する能力がなければ、馬力は出せないんじゃないですかね。我々は2021年から燃料の主成分はカーボンニュートラル素材で戦っていましたから、知見はけっこうあると思っています」

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