「F1ドライバーってすごいな」「2022年を象徴するスピンオフ」。現役ドライバー松下信治の目に映ったF1新時代 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【アロンソやベッテルが輝いた】

 そういったなか、約30%のバトル増加は「ベテランたちの腕が光る場面を演出した」と松下は考えている。

「バトルが増えたことで、ベテランの活躍できる場が増えたと確信しています。僕もバトルが強いのは豊富に経験があったからで、日本に帰ってきてからもバトルをした回数は周りのドライバーに比べて圧倒的に多いからバトルに強い。

 もちろん、最初から持っている上手・下手というのもあるけど、バトルは一発の速さとはまた違った別のスキルで、その瞬間に本能的に反応してやるものだから、そういうところの巧みさを磨くには経験値がすごく大事。だから、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ/41歳)やセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン/35歳)のようなベテランの活躍の場が増えたんだと思うし、それによって面白さが増したなと感じました」

 その一方で、マシン重量が798kgに引き上げられたことの変化と、空力・タイヤ特性によるアンダーステア傾向なマシン挙動の変化も見て取れたと、松下は指摘する。それでも「バトル増加は間違いなくドライバーにとっても歓迎すべきことだ」と言う。

「スピードは明らかに遅くなっているし、フラフラしているし、僕が乗った(2017年の)ハイダウンフォースの頃のF1マシンに比べれば乗りづらいんだと思います。もちろん速いクルマに乗るほうが楽しいに決まっているんですけど、バトルができるほうが楽しいし、何より会場のお客さんの数が全然違いますから、そういうところで活躍したい。

 ドライバーって基本的には目立ちたがり屋ですからね。F1の前座としてFCJ(フォーミュラ・チャレンジ・ジャパン)で走った時も、観客の皆さんからもらうパワーが間違いなくあって、集中力も全然違いました。SFよりもGTでレースをするほうがお客さんがたくさん入っているから『よっしゃあ!』っていう気分になるし。リップサービスじゃなくて、本当にそういうパワーはあるんです」

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