フェルスタッペン優勝の裏にあったメルセデスAMGとの駆け引き。度重なるアクシデントへの対応にとったそれぞれの戦略 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

最大懸念は2対1になること

 48周目のVSCで、2ストップのレッドブル対1ストップのメルセデスAMGという戦いは結末がわからないまま幕切れとなってしまった。だが、レッドブルはレッドブルで厳しい判断を迫られ、メルセデスAMGはメルセデスAMGで戦いの第二幕へと挑んでいった。

 ハードのレッドブル対ミディアムのメルセデスAMG。約12秒のギャップで、ペース差は1周0.5秒。ここからどんな最終決戦になるかと思われた矢先の56周目、今度はバルテリ・ボッタスがコース上にマシンを止めてSC導入。またしても戦いの結末を見ることなく、終了となってしまった。

「SCが出るまでは、ハードタイヤのまま最後までいけると思っていたよ。僕のほうが少しペースは遅かったけどね。ただSCが出た瞬間、僕は『ハードタイヤのままじゃ最後まで耐えきれないよ!』とチームに言ったんだ。だからピットインして、ソフトタイヤに履き替えた」(フェルスタッペン)

 メルセデスAMG勢はステイアウトして、ハミルトンが首位に浮上する。ここでもメルセデスAMGは、優勝のチャンスがなくなるピットインではなく、わずかでも優勝の可能性があるほうの戦略に賭けた。

 レッドブルにとってはプレッシャーのかかる状況下での判断だったと、クリスチャン・ホーナー代表は振り返る。

「地元ドライバーが15万人のファンの前でリードしているのをピットインさせて、ソフトタイヤに交換して2台のメルセデスAMGのうしろにするのは難しい決断だった。ミディアムタイヤのメルセデスAMGとハードの我々のペース差を見ると、あのまま走り続けるよりもソフトに換えてアタックするほうがいいと判断したんだ。

 最大の懸念は、2対1になることだった。しかし、メルセデスAMGはジョージ(ラッセル)をピットインさせたので、おかげでマックス(フェルスタッペン)は自由になり、ルイス(ハミルトン)と1対1の戦いになったね」

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