フェルスタッペン優勝の裏にあったメルセデスAMGとの駆け引き。度重なるアクシデントへの対応にとったそれぞれの戦略 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

メルセデスAMGが攻めの戦略

 つまり48周目の時点で、実質首位はメルセデスAMG勢であり、フェルスタッペンは実質的にルイス・ハミルトンの5秒後方。そこから劇的な逆転優勝でフェルスタッペンが地元大観衆を沸かせるのか、それともメルセデスAMG勢が純粋なスピードでは劣っていても戦略でひっくり返して今季初優勝を飾るのか、いずれにしても劇的なレースになったはずだ。

 しかし、48周目に角田裕毅がコースサイドにマシンを止めて、VSCとなった。

 これでフェルスタッペンは、残る1回のピットストップをわずかなタイムロスでこなすことができ、メルセデスAMGに抜かれることがなくなった。だがその反面、残り25周を走りきるにはソフトは履けず、ハードタイヤを履くしかなくなってしまった。

「ハードタイヤは使いたくない、という希望は伝えていたよ。でも、ちょっと不運なことにVSCが入ってしまって、ハードタイヤに履き替えるとミディアムのメルセデスAMGよりも少しペースが遅かった。

 まだギャップは11.5秒ほどあったので、最後まで逃げきれると思ったけど、彼らが大幅に追い着いてきたことは間違いなかった。彼らがハードやミディアムであんなに速かったのは驚きだったよ。C1、C2はとても硬くてスイッチオンするのが難しいと思っていたけど、彼らはそれができていたからね」

 フェルスタッペンがVSC中にピットストップを済ませることに成功し、首位のポジションをキープすることになった。その瞬間、メルセデスAMG勢はそのまま2位・3位に甘んじるのではなく、自分たちもピットインしてミディアムに交換することを決断した。

 このままでは、勝利のチャンスはもうない。しかしここでミディアムに履き替えれば、フェルスタッペンとのギャップは広がるが、逆転のチャンスも生まれる。ほんのわずかな可能性であっても、勝利のチャンスに賭けた。開幕から苦戦を続けてきたメルセデスAMGにとっては、今季初めてのことだ。

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