フェラーリ急降下の要因は「責任の所在」、レッドブルは「ホンダの技術が強み」。中野信治がF1上位チームの戦力を分析 (2ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、五十嵐和博●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Igarashi Kazuhiro

レッドブルの強みはホンダのPU

 もうひとつ、大きな影響を与えているのはパワーユニット(PU)の性能です。F1では、今年からガソリン90%とバイオエタノール10%を混合した「E10燃料」が導入されました。E10燃料は従来の燃料よりも発熱量が低く、馬力が絶対に落ちるはずなのですが、レッドブルのクルマに搭載されているホンダのPUは馬力が落ちていませんし、高い信頼性も誇っている。そこはホンダの技術がすばらしいところですし、レッドブルの大きな強みになっています。

 逆にメルセデスは馬力を落としてしまい、フェラーリは馬力を上げることには成功したものの信頼性に大きな課題を抱えています。E10燃料で馬力を向上させてきたフェラーリの技術者はすばらしい仕事をしてきましたが、開幕から数戦で、シーズンを通して高いパフォーマンスで戦い続けるのは厳しいということがわかってきました。気温が高かったり、気圧が低かったり、PUに負担のかかるレースでは弱点が露呈してしまった。

 PUの性能とチーム地力。このふたつによって生じた差がシンプルに結果として出ていると僕は見ています。

 トップ3の戦いを細かく見ていくと、レッドブルはホンダが開発したPUの信頼性を大きな武器にしながら、巧みなチーム戦略でゲームを支配しています。もちろん、マックス・フェルスタッペンという類まれなる才能を持ったドライバーの存在も大きいです。レッドブルはチームメイトのセルジオ・ペレスをうまく使いながら、チームが描いた戦略をみごとに実行しています。

 メルセデスはシーズンが進むにつれてクルマがよくなってきましたが、やっぱりPUの力が足りなくて、トップ2にはまだ届いていません。それでもマシンの信頼性と戦略、さらにルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルという2人のドライバーの強さで着実にポイントを積み重ねてきました。

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