ホンダF1を救ったトロロッソとの相思相愛。取り戻したプライド (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 フル参戦初年度のピエール・ガスリーが中団グループ最上位の予選6位、そして決勝でも中団トップを堅守して4位でフィニッシュ。トロロッソにとっても滅多にない会心のレースであっただけでなく、過去3年間の不振と批判でボロボロになったホンダにとっても、再び自信と誇りを取り戻すきっかけとなる鮮烈なレースとなった。

 トロロッソのメカニックたちは我を忘れて飛び合って喜び、その輪の中にホンダのスタッフたちもいた。開幕戦で5位に入賞してホンダへの当てつけのように「これで僕らは戦える」と言ったフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ルノー)の言葉に反論するように、ガスリーはアロンソよりもひとつ上のポジションでフィニッシュして、「Now we can fight!」とまったく同じ言葉を叫んでみせた。

 ホンダにとってトロロッソは救世主となり、トロロッソにとってもガスリーにとってもホンダが救世主となった。両者の相思相愛はここに始まり、2019年ブラジルGPの2位表彰台、そして2020年イタリアGPの初優勝へとつながっていく。

 ホンダの八郷隆弘社長が2021年かぎりでの撤退を表明する際、最も記憶に残るレースは「2020年イタリアGPだ」と語ったのは、窮地を救ってくれたトロロッソへの感謝の思いがあったからだ。

 2019年の豪雨のドイツGPでレッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝した際、「ダニール・クビアト(トロロッソ)が表彰台に立ってくれたことのほうがうれしい」と田辺テクニカルディレクターが吐露したのも、ホンダを救ってくれたトロロッソに恩返しができたという思いがあったからだ。

 2020年イタリアGPで、アルファタウリのマシンのサイドポッドに「ホンダとトロロッソのタッグ50戦目」を記念した巨大なロゴを貼り、山本雅史マネージングディレクターとトスト代表がその前で記念撮影をしたのも、トロロッソ改めアルファタウリからも大きな感謝の思いがあったからだ。

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